遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
どうかな。今となってはわからない。永遠に……何を思って俺に声をかけたのかなんて
免罪符か……なるほど。面白いことを言うな。なんだか腑に落ちたよ
確かに時任のせいにすれば自分を責めずにすむ、責任逃れの装置だ。あいつがこう言ったから、呪いをかけたから。そう言えば自分の人生に向き合わないでおく口実ができる、逃避の建前をもらえたようなものさ
俺はあいつを利用しているだけかもな。生前も死後も……利己的すぎて吐き気がする
思ってくれる人が沢山いるのはいい事じゃないか。それが君の保険になる。ざわつかせないでほしいという気持ちもわかるがね…生きるという事それ自体が夾雑物に塗れることじゃないか
完璧な静寂なんて耳を潰しでもしない限り得られないのさ
……個人的に興味がある。耳に鉛や蠟で封をしても心臓の鼓動は聞こえるのだろうか。外部の音は聞こえなくても内に響く音ならあるいは……
さすがに試す度胸はないが
捨てられないモノには捨てたくない理由がある。今の君を形作る総決算だ
義務と演技か。……君は誠実な皮肉屋だな
生きる理由を他人に因る事は否定しない。俺自身がそうだからな。必要とされてるうちは生きる意味がある
本当に気にしなくていい(「買って返す」という従夢君にやんわりと)
交際相手に?言えるわけがないだろう
防衛本能か……そう、かもな。まったく、死にたがりなのか生きたがりなのか。
君の命より大事なものは何だい?
彼女に対してもそう思う。素直に認めよう。……欲望を隠し立てしてもしょうがない
……だけどこれが恋愛感情なのかそれ以外の何かなのか、よくわからないんだ
時任が死んで、謎解きも煮詰まって、自暴自棄になってるのかもしれない。その捌け口を無意識に彼女に求めているのだとしたら……最低だな。度し難い人間のクズだ。自分を慕う少女を汚い欲望の対象に貶めて
……堕ちるのは俺だけでいい。暗く澱んだ深海の底に彼女を道連れにしたくない
どうしたらいいか……それは自分で考えろ。
一つアドバイスするなら……「何もするな」。
君は君、お兄さんはお兄さんだ。お兄さんが誰とどう関わろうが君に束縛する義務はない、過干渉はやめたまえ。お兄さんは大人だ。彼の進路や将来には彼自身が考え抜いた上で決断をくだすべきだ。
君はそれを見守るんだ。時にもどかしいし辛いだろうが……自立する、とはそういうことだ
俺はつまらない男だよ。君ならもう底なんて見抜いてるんじゃないか