遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
(従夢君の話に静かに耳を傾け)
何もしないのは一番狡い。だってそうだろう、言い逃れができるんだから
……少なくとも俺はそう思う。俺は彼方を救えたかもしれない。でも何もしなかった。むざむざ見殺しにした。何もしなかったのとできなかったのは違うんだ
……間接的に殺したようなものだ
(従夢君の指摘に少しだけ笑い)
得たものがあれば失うものもある、か。そう……その通りだ。少なくともあいつと出会って初めて諦めたくないものができた。あいつの音だけは諦めたくなかった。
反応実験か……
虐げる側に回るか虐げられる側に回るかと迫られたら大半は前者を選ぶ。生存本能に従えば自然とそうなる。
君はお兄さんの平凡さに嫉妬した。そして自分と同じ所へ引きずりおろそうとして挫折した。
……俺に言わせれば君もお兄さんも不器用すぎる。本当に抗うべき相手は別にいたろうに。
歪んでない人間なんていないさ。俺も君も彼も……誰でも。その歪みを許し合って生きていくのさ、きっと
……簡単にできれば苦労しないがな
脅迫とは穏やかじゃないね。
手遅れか……だろうな。見てればわかる。せいぜいその相手を大事にすることだ
(従夢君に愛らしく微笑みかけられるも淡々と受け流し)
媚態は出し惜しみしたほうがいいぞ。軽く見られる
互いを尊重する対等な関係でしか愛情が育まれないなら、俺が長続きしないのも仕方ない
……淡泊すぎるとはよく言われる。でも、これが俺だ。君が君であるように
……お互い恋愛の真似事しかしてないなんて笑えるな。ああ、違う、先を越されたか。
……察しが良すぎる(ばつが悪そうに)
失言は詫びるから軽蔑の目で見ないでくれ、結構刺さる。
ましてやに深い意味はない。……本当に。
まあ、人に触られるのが気持ち悪い……とまでは言わないが、潔癖症のきらいはあるかもな。
なんとなく警戒してしまうんだ。割り切って遊ぶ分には問題ないが
君は好きな人について語る時だけ年相応になるな。
さっきみたいに科を作って媚びるよりそっちのほうがずっといい。……ああ、変な意味じゃなくて
空回り、大いに結構じゃないか。所詮この世はから騒ぎで空回り、恋に落ちたら存分に振り回されてみるといい。
(従夢君の言葉に虚をつかれ、一瞬目を見開いてから)
……自分を赦せ、か。
むずかしいな……善処はするよ
(従夢君と対峙、柔らかく微笑んで)
……ありがとう