なんだかゴチャゴチャと散らかってる皐月さんの部屋。
タバコ臭かったりなんだりするけれど、一部だけきちんと整理整頓されている。
誰かを招待するための部屋じゃない。一人暮らしするだけの部屋。
そんな部屋に入る物好きもいるかもしれない。
一緒に住ませて貰っているだけで
恋人だとかそういった関係ではないのだけどね。
びっくりするぐらい楽しく過ごさせて貰っているし
当たり外れでいうと大当たりだわ。
(そういって少々気恥ずかしげにはにかむ)
安全性の面だと難ありだものねー…。
取り壊すことになっても仕方ないといえば仕方ないというか。
それはそうと、皐月さんが最近みた映画で
お勧めのものって何かある?
なら良いさな。
世の中なかなかままならねえことばかりだけど、当たりさえ引いちまえばこっちのもんだ。(にやにや)
ま、あれを制式に認められるならだな。
色んな基準やら通らねえんでやっぱ取り壊す、とかならなきゃいいが。
…うん。有難う。
でも、大丈夫だと思う。
少なくとも、あの人が私に何かするってことはないだろうから。
建っているのが不思議なくらい老朽化してるけど
寮生の子達が地道に手入れしているお陰、なのかしらね。
正式な寮として認められれば改装費用なんかも下りるだろうし
また違って来るのでしょうけど。
あー……よくある奴だな、うん。
ま、付き合ってるうちに、それが変わらなきゃ良いな。
なんかあったら私に言えよ? 殴り込みでもなんでもしてやる。
そうだな、猫鳴館だな。
私がいた時っからボロっちいんだが、今でもあるんだよなぁ。
うん。正直、私自身も驚いてるわ…。
こう、お話してるうちに意気投合して、成り行きで…。
ぼろっちいところっていうと猫鳴館?
そういえば私、あそこにも部屋を借りてたんだった…。
今度私物を引き上げにいかないと…。
(宙を舞う煙をぼんやりと眺める
ぶふぅっ………へ? 同棲?
マジか。知らなかった。高校生で同棲か。すげえな、私は泊まりくらいだったぞ。
つーか高校の時は寮暮らしだったからな、あのぼろっちーとこの。
(珈琲フレーバーのものを吸っては、水蒸気の煙をふうっと吐き出して)
いつもそう割り切れたら楽なのだけど
拘りがあるとそうもいかないのが辛いところよねー…。
ああ、そうだ。皐月さん聞いて。
私最近男の人と暮らしはじめたの。
(さらっと爆弾発言をしながら
ココアシガレットを一本取り出して咥えて
密かにお揃い気分を楽しむ。
と、いっても此方はお菓子なので
あくまで形だけではあるが。)
人生そういうもんだよなぁ……中々、思うようにはいかないし、いっても長続きしなかったりな。
順風万歩でいきたいもんだが、いかなかったらなんとかなると思っていくしかならねえよな。
(ごそごそとポケットから新しいタイプの電子煙草を取り出しては咥えて)
色々か…。
まあ、あるわよね。そういうの。
私も最近色々あって同じようなこと考えていたし。
この島で高校生をして
悩んだり悩まなかったりは変わらないだろうけど。
(などと言いつつ洋服のポケットから
ココアシガレットの箱を取り出して手の中で弄ぶ)
首都圏とか人口密集地よかマシだな。
そんでも昔はドンパチ騒ぎの矢面で色々やったが。
元気つったら元気だが、まあ大人の事情ってやつ?
いろいろあったんで身の振り方やらを考えてたのさ。
この島でシアターやって煙草吸って酒飲んではかわらねえけどさ。
どちらにせよ好ましくないお客様であることは確かねー…。
この島は結構平和な方だし、強盗騒ぎは余りきかないけど。
なんにせよ元気そうで良かった。
黄昏てる様に見えたから
何かあったのかと心配しちゃったわ。
(冗談めいた口調でそう言って彼女の傍へ腰を下ろす)
よう、冴来じゃねえか。入れ入れ。
どっか適当に座っていいぜ。
盗人は盗みとるだけだが、強盗は住人に危害加えてでも盗んでくって違いがあるんじゃねえかな。ま、適当だけどな。
盗人と強盗は殆ど同じ意味では…?
あぁ…えっと、そうじゃなくて。
…うん、こんにちは。お邪魔します。
(結局無難な挨拶を口にして部屋へ入る
んぁ……?
誰かいるなら入ってきて良いぜ。
盗人と強盗なら遠慮してくれ。
(扉の隙間から中を覗く少女が一人)
……………。
(久しぶりに遊びに来たはいいものの
何と声を掛けるべきか決め兼ねているらしく
非常に困った顔をしている)
煙草うめぇ……さみー………あー、わりと寂しいな。
うっへぇ……あー、愛飲してる煙草のリニューアルというか、小変更あるとなんか時代に負けた感じするな。
……あれ、気付いたら部屋が片付いてら。
皐月さーん、いるか?
なんだ、いないのか…。
折角酒持ってきたのにな…。
それにしても、相変わらず荒れた部屋だな。
皐月さん帰ってくるまでに
ちょっと片付けとくか。
うん…。
ねぇ、隣に行ってもいい…?