仲良くなりたい｜リアクション

仲良くなりたい

☆テオドロス・バルツァ

　夕方、エレノア・エインズワースは気紛れに来た人気の無い学校の屋上でテオドロス・バルツァに遭遇した。
「よお」
　珍しくテオのほうから話しかけてきた。
「おや、久方ぶりですねテオ。私の顔覚えてます？　人やもれいびの顔なんかじゃがいもにしか見えませんか？　ハハッ！　……笑えよ」　
　最後に急にドスの効いた口調に変わったことに動じる様子もなく。テオはつまらなそうに伸びをした。
「猫は笑わねえだろ。エレなんとかだっけか。変わったやつだな」
　エレノアは大げさに、さも意外そうな顔をした。　
「エレノアです。なんと、私の名前を覚えてくれたんですか？　光栄ですね。もれいびの顔なんて覚えちゃいないと思ってました。私の靴を舐めさせられそうになって悔しかったんですか？　本当は貴方にとってこの世界のフツウはさして優先すべきことでもないんでしょう？　本当に大切ならあの時舐めたでしょうからね？　ふふふ」
「さあな」
　相変わらずそっけない態度でテオはひとりごちた。
「俺だって面白くないより面白いほうがいいさ。フツウ？　人の苦労も知らねえで……」

　休日。
　桜庭円はにゃーくんとお散歩していた。
　そこへ向こうからテオが歩いてきたのである。
「やっほー！　テオ！」　
「にゃー」
　にゃーくんも嬉しそうだ。
「ねー、テオー！　あそぼーよー！　神魂の暴走ないし暇でしょ？」
　円は熱心にテオを誘う。
「たまには、親睦を深めよーよ、にゃーくんもこんなに喜んでるからさ！　ボクも遊びたいし！」
「ケッ、子守りは俺の仕事じゃねえ」
　しかしテオはそっぽを向く。
「やっぱり断るかーつれなーい！」
　だが円は諦めない。
「ねー、ボクの名前、覚えてる？」
　テオはフンと笑って、
「にゃーの飼い主だな」
　と答える。
「んー、それはそうだけど。桜庭まどかだよ、さくらば、まどか！　人間って一括りにしないでよー」
　だがテオは興味ないという様子で、そのまま歩き去ろうする。
「んー、仕方ない、おいしい缶詰のごはんいる？」
　その言葉に、テオの背中と尻尾がピクッと反応した……

「もー、テオはツンデレだなぁ」
　１分後、にゃーくんと肩を並べて、おいしい猫缶をごちそうになるテオであった。