歴史探偵　７枚の写真編｜リアクション

歴史探偵　７枚の写真編

●小山内海
　――なんだかオリエンテーリングみたい。せっかくだし、目指せ全制覇！
　ぐいっと拳を作って小山内海は胸中力強く叫んだ。
　電車を降りた彼女が手にしているのは事前に色々と書き込んでおいた地図である。
　今いるのは星ヶ丘駅だ。始めに目指したのはイソラ・ガレッジャンテだった。そこには大小様々なヨットが停泊していた。
　正直な所彼女はステッラ・デッラ・コリーナとイソラ・ガレッジャンテの間でかなり迷っていた。地図にも思考した痕跡が伺える。
　最終的に彼女は直感を信じた。けれども時には直感だって間違えるものだ。
　７枚ある写真のどれを見比べても合致する風景が見当たらない。どうやら最初のステッラ・デッラ・コリーナが正しかったようである。
　さ、次に行かないと。そう胸中で言いつつ海は気持ちを切り替えた。

　エノコロ岬灯台の屋上は実に見晴らしが良い。吹き抜ける潮風が灯台によく似合う。海を広く眺望できると言えばここだけだ。
　何となく不快な気持ちがこみ上げる。本能が長居したくないと語り掛ける。
　あと少し、もう少しだけ。そう心で言い聞かせつつ海は写真を確認する。そして見つけ出した。
　それだけを確認すると彼女は逃げ出すように灯台を後にする。その理由は彼女にしかわからない。

　徒歩と電車で次にやってきたのは寝子島マリンパラダイスだ。多くの人と多くの魚介類。確かにここも２つの条件が当てはまる。しかし写真の光景とは少々違うようだ。どちらかと言えば写真は魚市場と言えよう。それにしてもマリンパラダイスはいつ見ても賑わっている。中でも親子連れの家族が多く目立つ。
　これ以上探しても合致する場所はなさそうだ。海は次の目的地である寝子島魚市場へと移動する。
　――猫がいて、魚がいて、船があると言えばここかな。
　写真を眺めつつ彼女は気が付いた。ふとマリンパラダイスで見ていた写真を取り出した。
　建物の形がかなり似ていた。試しに海は写真の構図と同じになる場所を市場で探してみた。
　予想は的中した。マリンパラダイスだと思っていた写真が実は魚市場だった。では魚市場と考えて見ていた写真はいったいどこなのか。
　寝子島で船が停泊できる場所は寝子島漁港と寝子島マリーナ、そしてイソラ・ガレッジャンテの３つに限られる。そしてその内の１つであるイソラ・ガレッジャンテはヨットハーバーであって漁船などの大型船は停泊できない。故に除外される。では寝子島マリーナであろうか。それとも寝子島漁港。
　いずれにしても答えは出てこない。思考を巡らせる間にも時間は刻一刻と進んでいく。
　――いかなきゃ。
　頭を振って迷いを払う。海は参道商店街を目指した。
　彼女の実家は旧市街にある。写真の商店街も実に見慣れた光景だ。それでも写真の光景よりは歴史を物語ってはいるが。
　参道商店街に辿り着くとすぐに写真の場所が見つかった。それは造作もない事だった。
　さて残るは千年杉と三夜湖の２か所だ。海はロープウェイを使って中腹まで移動すると千年杉へと歩みを進めた。
　――写真の杉の木って、やっぱりこれだよね。
　写真の杉の木も大きいがやはり実物も大きい。間違いなく写真の杉の木は千年杉である。
　改めて確認する事もなく彼女は九夜山頂上展望台を目指した。
　展望台へと到着した彼女は最初に確認したのはそこからの眺めだった。
　山の峰々に囲まれた湖。そして高い空が映り込む場所。なんだか少し物足りないような気もする。しかし三夜湖を一望できる場所はここで間違いなさそうだ。
　海は携帯端末を取り出すとストップウォッチアプリの停止ボタンをおもむろに押すのだった。

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あとがき

担当マスター： RAGING ARMS
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★クリアタイムランキング
ペア部門
＞１位　すばみの（新井すばる・神野美野梨ペア）　総時間数：１８１分（当社調べ）　発見数：７／７

ソロ部門
＞１位　小山内海　総時間数：１９７分（当社調べ）　発見数：５／７
＞２位　桜庭円　総時間数：２０３分（当社調べ）　発見数：５／７
＞３位　御剣刀　総時間数：２３９分（当社調べ）　発見数：５／７

★クリティカルスポット発見者
＞御剣刀（三夜湖、エノコロ岬灯台）
＞桜庭円（エノコロ岬灯台）
＞小山内海（エノコロ岬灯台）
＞すばみの（エノコロ岬灯台

★その他クリティカルスポット
＞ステッラ・デッラ・コリーナ／オープンテラスのレストラン／夜限定
＞寝子島漁港／早朝限定
＞寝子島魚市場／早朝限定

　説明しよう！
　クリティカルスポットとは、特定条件を全て揃えた決定的観測である。

　今回、各人の行動で「朝」や「夜」という時間指定がない限りは「日中」として一律扱った。
　ではなぜ灯台が該当しているのかというと、答えは簡単だ。ある１つの区画の中に２つの名前が混在していたのを覚えているだろうか。そしてガイドにも「高台」というヒントがあったのも覚えているはずだ。だからみんな灯台を選択したのだろう。そして前述のとおり「日中」に探索したから条件が達成された。

　では、三夜湖はなぜなのか。
　ここで「Ｆ４」にもう一つ指定可能な名前があったのを覚えているだろうか。
　――青い名前のアレである。
　名前指定はこういう活用もできるのだ。

　自身が抱いた推測や仮説を正しいものとするために、あれこれと工夫する楽しみ、そして自分一人では達成できない隠された追加要素。
　無論、無理して達成する必要もない。クリア条件は平等でなければならないからだ。だからこそ最低限で満足できない人のために追加要素を準備しておく。
　これはあくまで自由選択なのである。今後もこのような酷似した「ひみつ」は多用していくつもりである。もっとも自分の権限が及ぶ範囲内だけではあるが。

　なお、この名称は、二転三転していく。

★あとがき
　いかがでしたでしょうか。
　今回は少々複雑怪奇なものでした。それでもハイリスクハイリターンもまた楽しいと思いませんか。

　行動内容を受け取って少し考えた事があります。それは「人数が少なくてよかった」という本音です。
　しかし同時に人数が少ないことで、１人で周ろうとしたがために行動の余裕が失われていたのではないでしょうか？

　今回の歴史探偵は人手を割けば割く程濃密な描写が可能となるシナリオでした。逆に１人でより多くの事をしようとすればするほど、薄く引き伸ばしたような、または一部だけが取り上げられるような結果となってしまうのです。
　協力というのは、互いに手間を減らして、余裕を増やす手段だと私は考えています。

　ところで今回、７か所ぽっきりという行動が多かったですが、８か所以上を探索しても大丈夫だったんですよ。それこそ３００分ぎりぎりまで行動してみるという手もありました。まあ、その分内容は希釈されてしまいますが、そういう手段もあったという事を伝えたかっただけです。

　では改めて、今回のスポットを公開しましょう。

　Ａ８：ステッラ・デッラ・コリーナ
　Ｅ１２：エノコロ岬灯台（エノコロ岬）
　Ｍ６：寝子島魚市場
　Ｍ５：寝子島漁港
　Ｋ３：参道商店街
　Ｇ３：千年杉
　Ｆ４：三夜湖（九夜山頂上展望台）

　以上です。

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