ある日の寝子高生徒会会議｜リアクション

ある日の寝子高生徒会会議

「予算についてはあたしも住んでるあの無駄に豪華な星ヶ丘寮、アレ寮費だけで運営されてるわけじゃなくて理事長のシュミみたいなアレコレのためにおカネが投入されてるハズよね、アレコレについて延期や中止を求める署名でも募って、その分を回して貰えないかしら？」
　焔が言う。
（ちょっと話し合いが長いなあ）
　夏朝は癒しを求めて手元のメモに猫さんを描きだした。

（エアコンか。彼女のクラスは２組だから特に問題はないが……）
　などと思いながら聞いていた弦一郎は、熱心に話す修が飲んでいるお茶に気づいた。
（お代わりが必要そうだな）
　おもてなしの精神を発揮して、二本目のお茶を差し入れようと背後から向かう。
　
　そのとき、華蓮は感じていた。
（皆さん熱心に発言していて、私が目立てていませんわ）
　修の発言が一区切りついたとき。華蓮は突然バッと立ち上がった。
「私の名前は財前華蓮ですわ！」
　そしてドヤ顔で座る。
　華蓮をよく知る者たちは（またか）とスルーしたのだが。

　驚いたのはちょうどお茶を修の机に置こうとした弦一郎だ。
「う、うわああああああああ！」
　運の悪いことに、開いたお茶の缶を倒してしまった。お茶が大切な資料の上に……
（なんてこった！　良いところ見せるどころか只のトラブルメーカーじゃねーかッ！！　ど、ど、どうしよう！！？　リカバリ出来るのかよ、俺！　彼女が見ている！）
　パニくる弦一郎。
　修の表情が一瞬引きつったが。
「すまないが、雑巾を頼む」
　書類を手早く引き揚げ、テイッシュでお茶を吸い取った。
「すまん！　今持って……」
　あわてて動き出そうとした弦一郎に、すっと雑巾が差し出された。
　蓮だった。
「す、すまん、本当に」
　頭を下げ、慌ててテーブルを拭き始める弦一郎。
「ありがとう」
　修が蓮に言う。
「美化委員として当然のことです。床にはこぼれずにすんだようですね」
　床をチェックしながら蓮が言う。
「先輩も気にしないでください。バックアップもあるし。さて、続けよう」
　修は弦一郎に視線を向け、つとめて柔らかい口調で言う。
　テーブルを拭き終えた弦一郎は、冷や汗をかきながら雑巾を洗いに去った。
　購入とリースの比較、見積書、事業決算書を元に幾ら出せるかの試算等、修の説明は続く。

「ちょっといいかな？」
　１－２の学級委員信彦が手を上げた。
「学業に集中するためにも導入すべきだと思う。快適な環境で勉強した方が効率的だと思うよ。体調を崩してしまっては勉強どころではないからね。
　寝子高レディの美容と健康のためにも、冬は加湿機だって欲しいぐらいさ。
　夏場を考えてみてほしい……エアコンがないがために発生してしまうレディ達のブラ透け！」
　おお！　という数人の男子の声があがる。
「これで学業に集中しろだなんて無理な話さ。場合によっては、先日のように親御さんが直談判しにきてしまうかもしれないよね」
　あくまでも爽やかに言う信彦である。　　
「ただ導入するだけじゃなく、一定の温度や湿度を越えた際のみ使用できるようにし、学級委員がＯＮ/ＯＦＦの管理をするとかルールを定めよう。これがないと教職員を説得することは難しいよね」
　えー、学級委員がリモコン管理するのかよという声が一部で上がったが、上級生の多くが頷いた。

「生徒会側で出来ることの範囲を超えているかもしれないけど、学校側に要望を取りまとめるのはありだと思う。
　それこそ、生徒に対するアンケートや署名活動をやるというのなら、体を張って走り回ってもいいぜ」
　博美も言った。
「意見ありがとう。予算に関しては、生徒が五百円ずつ寄付する案、バザーを開き売り上げも充当する案等を考えている」
　修の言葉に、夏朝は思う。
（寄付の為に、１日バイト増やして１万だけでも……と思ってたけど、５００円くらいでいいなら助かるなあ）
「八神さんの案に賛同です。でも駄目だった時、私達の身を護るには植物での気温調整しないと、熱中症で学校に殺されてしまいます!　だから私達には花壇が必要です!」
　再び手を上げた美咲紀の発言に、修が苦笑する。
「駄目だった時前提なのか。花壇はエアコンと別に考えていいんじゃないかな。
　さて、学校には後日なんらかの回答をもらいたいのだが、先輩方が忙しいなら俺が生徒側の責任者になっても良い」
　茂が頷いた。
「その資料の説明は八神が適任だろうな」
「それなら、俺がお詫びに資料を運ぶことにしよう」
　戻ってきて雑巾を蓮に返した弦一郎が言った。
（こんなのでリカバリーになるだろうか）

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