【体育祭】七色のパン食い競争　白猫組サイド｜リアクション

【体育祭】七色のパン食い競争　白猫組サイド

【白と黒の追跡者】

　その頃。
「ふふ、ちょろいもんだねぇ」
　桜崎巴さんは片手に持った藍色のレーズンパンを頬張りながら、悠々とゴールを目指していました。
　このまま順調に行けばトップでゴールは間違いなし――そのはずでした。
　しかし。

「う、うわあああっ！　う、牛さん、落ち着くんだぜぇっ！？」

「……ん？」
　そのとき、遥か後ろの方から、サンマさんの悲鳴が聞こえて、巴さんはハッとしてそちらを振り返ります。
　そこで彼女が見たものは――

　目を充血させて、自分に全力で突進してくる一頭の牛さんの姿でした。

「……なんだって？」
　この状況に、さすがの巴さんもにわかに顔を引きつらせてしまいます。
　そのときでした。

「カカカッ！　説明しようっ！」

「……っ！？」

　いつのまにかすぐそばに立っていた高野先生がもの凄くいい笑顔を浮かべて言いました。

「あの牛さんは私がとある牧場から特別にお借りした、とても正義感の強い牛さんの『モーさん』だ！　桜崎、モーさんの目が黒いうちはそんなズルは許されないぞ！　悪いことをすれば必ずその報いがある！　これぞ『天モー恢恢疎にして漏らさず』ってヤツだ！」
「あんた、まさかそれが言いたかったがために牛を連れてきたんじゃないだろうねぇっ！？」
　叫ぶや否や、巴さんは全力でグラウンドの土を蹴りました。モーさんの目は『真剣』と書いて『マジ』でした。あのスピードで轢かれたらきっと人間などひとたまりもないでしょう。
　巴さんはパンをしっかりと手に持ったまま、校門の外へ飛び出します。
　そんな巴さんと、その後を追うモーさんの背中を見て、

「……失礼な。私はお前らが楽しい想い出を残せるように一生懸命にだなぁ――」

　高野先生はちょっと拗ねたような声で、そんなことを呟いていたのでした。

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