【水泳大会】多分、生死を賭けた戦い（白猫サイド）｜リアクション

【水泳大会】多分、生死を賭けた戦い（白猫サイド）

【激突！　自由形！　スタート編】

「選手のアナウンスをするぜ！」
　次いで、放送席に座ったのは鏡箕萌である。
「1コースから順に選手の名前を言うぜ。

　1コース、黒：霧谷朧　選手　『め、目立つのは苦手なんよ……』
　2コース、白：シダ美穂戸　選手　『シンチャオ！　見ろ、水着』
　3コース、黒：塔ヶ崎璃亜　選手　『緊張しますねぇ』
　4コース、白：雨寺凛　選手　『こう見えて泳ぎは得意なんだ！』
　5コース、黒：鳴神楓　選手　『負けるつもりもさらさら無ぇぜ』
　6コース、白：北原みゆき　選手　『大丈夫……大丈夫……（ぶつぶつ）』
　7コース、黒：葉利沢倫理子　選手　『……ッ』
　8コース、黒：御剣刀　選手　『負けたくない、負けたくない！　負けない！！』

　って。まゆ先生！　なんか、黒猫組が多くないっスか！」
「ごめんね！　でも、そのまま競技開始して！」
　あわあわと謝る相原まゆ先生であるが、理事長がにやりとしているのを見て、萌は、何らかのてこ入れがあったのは間違いないと確信する。
　だが、しかし、白猫組にやや同情的な声援が上がる故に、ある意味悟っているのだろう、元凶が誰であるかを……。
　
「では、位置について……よーい……」
　パァンッ！　
　空砲の音と共に、一斉に八人の選手が飛び込む。
　飛び込んですぐに先頭に立ったのは、璃亜である。
（気合いを入れて、勝たないと……！）
　璃亜の狙いは、自身の体格を活かした逃げ切りである。
　最初から全力で終始泳ぎ続ける……という狙いだろう。
　それに、次いで朧、倫理子以外の選手が続く。
　なぜならば、朧、倫理子の二人は視線が苦手で、飛び込みの動作が遅れたからであり、それが最初のペースに影響を及ぼしている。
　しかし、朧はやや前にでている。
（ターンは得意だから、はじめは体力温存で、ターンで一気に追い抜くさね！）
　一方、倫理子はそのまま最下位に付けているが、徐々にスピードは上がっている。
（……！）
　完全に、泳ぐことに集中しているのだ。

　やがて、ターン付近になると、序列に変化が訪れる。
　璃亜がトップをキープはしているが、ほとんど差は無い形でシダが追いついているのだ。
（ほめろ　蹴るぞ　蹴りたい　蹴らせろ！　シダ　ダダ　ダダダ）
　勢いよくバタ足で推進力を得ているのだ。
　そして、それにロケットスタートを決めた楓と、刀が並んでいる。
　その差はほぼわずかである。
　楓と刀にしても、二人とも先行しての逃げ切りを狙ってはいたものの、完全に体力を使い切ろうとしているわけではなかった。
　が、気合いは十分ある。
　楓の場合は、泳ぎながらこう思っている。
（こちとら元シールズのジジイにみっちりしごかれてんだ、そこらの水泳部員よりはよっぽど泳げるっつーの）
　刀の場合は、頭の中は勝利することで埋め尽くされている。
　そして、それらからやや下がって朧と、凜と倫理子である。
　その中の凜は、泳ぎの練習をしてきている。
（数日前から練習してこの日の為に備えておいたんだ！　フォームやターンも仕上げてきたよ！）
　数日で、フォームとターンを仕上げてくるとは、見上げた執念であるが、ある意味短期間で仕上げたと主張するだけの練習は積んできたのだろう。
　そして、現状の最下位はみゆきとなっている。
（私なんかがいて勝てるかな？　少し不安……でも人前では絶対に弱音は吐かないって決めたから）
　立派な心がけである。
　やれない、無理！　と投げ出さずに立派に競技に参加するけなげな姿は、素晴らしい。
　一日1時間のジョギングも、プールに通うこともあってか、この付近でのタイムそのものは悪くはない。
　そして、運命のターンを迎える。

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