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秘密のひとつふたつは誰にでも
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自宅アパートを、恋人と二人で掃除中。
「やめて! 見ないで!」
「え?」
城山 水樹
の鋭い声に、
ヒュー・ヒューバート
は顔を上げた。両手に持ち開いているのは、鉛筆で漫画が描かれているノートである。
ちょっと古いキャラクターものの表紙。絵柄や内容からして、作者はきっと子供だろう。それが同棲中の部屋にあるということは、描いたのは子供時代の水樹で間違いない。
「これ……」
かわいいね。面白い発想で僕は好きだな、と、ヒューは言うつもりだった。
が、瑞樹はヒューの手から素早くノートを奪い去ると、子猫が敵を威嚇するときのように、ふぅっ! とヒューを睨んでくる。
「読んだ? 読んだよね? なんで読んじゃうの……」
「えっ……と、そこに置いてあったから?」
勢いに押され、ヒューは小声で答えた。
「あ~、私が置きっぱなしにしちゃったのかぁ……」と、水樹はがっくり項垂れている。
「さっきそこの未開封だった私物入れ片付けて、これだけは見られたくないって思ったのに……」
「……面白かったよ?」
ヒューは笑顔で告げた。ヒューとしては嘘偽りない本心だ。荒唐無稽の中に味がある。勢いがある。が、水樹はぱっと顔を上げ、目を見開いた。
「これが? スーパーモデルの女の子が超人ガールに変身して、悪の組織と戦うなんていう支離滅裂な話なのに?」
言いながら、水樹はどんどん顔が熱くなっていくのを感じていた。こんなの描いたの誰だ! 私だ! と、脳内の水樹が叫んでいる。
イラストを描くのが流行った小学校時代。イラストだけでは物足りなくなって描いた漫画が、成人後に恋人に見つかるとか、旧黒歴史に新黒歴史の上書きすぎるだろう。
「うん。先が気になるから、できれば続きを読ませてほしい」
「今見たところまでを忘れて欲しいくらいなのに無理!」
「えぇ~……」
ヒューの眉がへにょりと下がる。そんな表情をされたって見せるわけにはいかないと思っていたら、ヒューは「今日の夕食、好きな物なんでも作るから」と言ってきた。
「そんなにこの漫画が見たいの?」
「うん」
「私は本気で、そんなに面白くないと思ってるし、すっごく恥ずかしいんだけど」
「小さい頃の水樹が描いたんだと思うと、すごく微笑ましいじゃないか」
ヒューはにっこり笑った。楽しいことが大好きな水樹が、子供時代に夢中になったことだ。それはまるで水樹の原点のようで、そこがヒューにとっては愛らしい。
しかし水樹は「やっぱりダメ!」と、持っていたノートを改めて、私物入れにしまいこんでしまった。
「こんな漫画描いてたことは絶対秘密だったのに……。恥ずかしいの読んだんだから、ヒューも秘密を話しなさい!」
「えぇ……」
「ほら、早く!」
水樹はヒューに詰め寄った。「秘密か……」と考えこんでいるヒューには、黒歴史がないのだろうか。
(なくても全然ヒューっぽいけど。もしかしたら、ありすぎてどれを言うのか迷っていたりして)
どちらにしても『ヒューの秘密』というだけで、ちょっとワクワクしてくる。
ドキドキしながら、数分は待っただろうか。ヒューが「芸大のときの話でもいい?」と聞いてきた。
「写真科時代の失敗談とか」
「もちろん!」
水樹は大きくうなずいた。と、ヒューは後ろを向いて「僕もこれはあまり知られたくないんだけど」と棚をごそごそ。振り返ったとき、彼は両手サイズの箱を持っていた。
「失敗談じゃなかったの?」
「だからこれ」
ヒューが箱をテーブルに置き、蓋を開ける。中を見た瞬間、水樹は吹き出した。そこにはなにかの残像が写った写真が詰まっていたのである。
「なにこれ!」と束の半分ほど取り出せば、見るもの全部、残像、残像、また残像。白かったり茶色かったりするそれは、よくよく観察すると、どうやら全部猫らしかった。
「学生時代に、動物の写真を撮る課題が出て、学校にうろついてた猫を撮ることにしたんだ。それがすばしこくて。それ全部、失敗作。しかもその写真、残像の色はいろいろあるけど、三毛猫で1匹なんだ」
「1匹!?」
水樹は目を見張った。それをよくまあ根気よく撮り続けたものだ。そして猫も逃げ続けたものだ。
「あはは、これなんて残像というより幽霊みたい。こっちはちょっと猫っぽいけど、こっちなんて子どもの落書きだよ」
「そんなに楽しんでもらえるなら、この写真をとっておいたかいがあるな」
ヒューは穏やかに笑った。
水樹がいくら笑っても、恥ずかしがる様子はない。本当に、水樹が楽しんでくれるのが1番だと思っているのだろう。
「……じゃあ私も見せてあげる」
水樹は私物入れの中から、子供時代の黒歴史ノートを取り出してきた。はい、とヒューに差し出すと「いいの?」と聞かれる。
「先、気になるんでしょ?」
恥ずかしそうに笑んだ水樹から、ヒューはノートを受け取った。中を開くと、拙いながらも一生けんめい描かれた漫画が、ページの隅から隅までを埋めていた。
「この台詞、すごく水樹らしいな」
「え? どこ?」
「ここ。『私に勝てるなんて思わないことね!』って」
「うわぁ……それ当時のアニメにそういう喋りの子がいたの」
ヒューは額を押さえる水樹をあたたかい気持ちで見つめた。そのアニメを好きでたまらない気持ちが、水樹にこのキャラを作らせたのかもしれない。
(僕と一緒だ)
ヒューも残像みたいな猫を撮り続けている間、悔しく思いながらも楽しかった。
「さっきの猫、実は写真科で『まともに撮れたらラッキー』って言われてた猫なんだ」
「えっ、そうなの? それで結局、まともに……」
「撮れたんだ。1枚だけ」
ヒューは改めて写真が入っていた箱を取り出した。ほら、と見せたのは、箱の一番下に入っている1枚。たしかにそこには、三毛猫が写っている。ただし。
「すっごい太ってるね!」
「これであのすばしこさなのがすごいって、みんな言ってた」
「うん、私もそう思う」
水樹はくすくすと笑った。
笑いながら残りの写真を見るうちに、ヒューは水樹の漫画を読んだ。
そして最後のページに――。
「サイン練習してあるね」
「えっ? そんなことまでしてた? うわぁ~黒歴史~!」
「全然黒くない。僕の写真に比べれば」
真っ黒に撮れた1枚をヒューが差し出せば、サインと写真を見た水樹が爆笑する。
目に涙すら浮かべた水樹に、ヒューもまた「そこまで!」と大笑いをしたのだった。
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あとがき
担当マスター:
瀬田一稀
ファンレターはマスターページから!
このたびはご参加ありがとうございました。
みなさんの秘密バレのアクションがとても素敵で!
読んでいて、あるいは書いていて「かわいいなあもうっ!」となっておりました。
仲が良いのはいいですね。
今後もこのまま、幸せに暮らしていけますよう。
みなさまの幸せのおすそ分け、ありがとうございました。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
瀬田一稀
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年06月21日
参加申し込みの期限
2026年06月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年06月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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