給食食べよ！｜リアクション

給食食べよ！

トントン、と誰かに起こされた。
「んあ？」
　確か、今日は日曜日だ。
（あたしは仕事で疲れてるんだ、もう少し寝かしてちょうだい）
しかし、布団に入っている感覚はない。何かおかしい。ぼんやりした頭で目を覚ますと、小学生くらいの女の子が「明乃ちゃん、給食の時間だよ！」といった。
森本明乃はぽかんとする。
「へ？　給食？」
　一体何年前の話なのか、と。
『お嬢ちゃん、迷子？』とでも聞きそうになってから妙な違和感。よく見ると明乃の身体は小学生の頃に戻っていた。夢だろうか。夢にしては妙にリアル感がある……明晰夢というやつだろうか。
件の女の子は「今日は給食当番だよっ！」と言ってきたので、慌てて机を離れて、給食当番の準備をする。給食当番用の白衣エプロンを服の上に着て、頭巾をかぶって、給食を運びに行く。
「今日の給食、楽しみだね！」
　向かう途中で水飲み場の鏡を見ると、どこからどう見ても小学生の女の子が立っていた。
（ああ、これなら）
　この謎の小学校空間で、背が縮んだだけだと浮いているのではないかと心配していたが。
（夢か）
　そういうことなら、給食当番をしっかりやらねばと。
　ワゴンで教室まで運んで、メニューを確認する。
「今日、カレーだよね！」
　皆嬉しそうにわくわく。
（ってことは揚げパンとニャルメーク、それに何かしらの野菜のお浸しってとこか）
　予想的中。人気メニューの揚げパンもついてきていて、皆大騒ぎだった。
（うん、懐かしい）
カレー味のシチュー、というか、これぞいかにも給食のカレーという感じ。色も黄色っぽい。
「皆、はい、並んで。大盛りの人は早めに申告……じゃなくて言ってくださーい」
　明乃の指示に列が出来始める。
（カレー、分配が難しいわね）
　全員に均等に行くだろうかと。
　給食のおばちゃんが多めに入れてくれたらしく、なんとか配りきって、机についた。
「うー、ニンジン嫌い」
「おれ、この玉ねぎは食べられるんだよね！」
　明乃はカレーに浮かぶ、緑色の球体を見る。グリンピース。
（小学生に馴染んじゃうわね……）
　今でも少し苦手だ。グリンピースが嫌いで、最初に集めて口の中へ入れて牛乳で無理矢理流し込んだっけ。
「明乃ちゃん、グリンピース食べてあげよっか？」
「え」
「代わりにニンジンお願い！」
　こういうやりとりも何気に懐かしい。
　カレーはびっくりするくらい、記憶通りの味だった。

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