プレハロウィンの『福？袋』｜リアクション

プレハロウィンの『福？袋』

◆季節外れの福袋

　今年もハロウィンの季節が来た。

「今年はどんなコスをしていこうかな♪」

　有沢茉奈は今にもスキップしそうな声色で言った。ちょうど大学の講義も終わり、恋人の閑野カノンと合流する。そして予定通り、一緒に今年のハロウィングッズを買いにシーサイドアウトレットへ向かう。

「どんなのがあるか楽しみ！」
「そうだな」
　
　２人は楽しそうに話しながら大学の敷地を後にした。
　同時刻。同じく大学のキャンパスで水上桜はこれからのことを考えていた。

（去年のハロウィンは受験を控えていたから、あんまり楽しめなかったな）

　そのおかげで大学に受かったともいえる。今年は恋人の滝沢匠と目いっぱいハロウィンを楽しむつもりだ。彼にもその意思は伝えてあるので、構内の一角で待ち合わせ。ほどなくして、向こうから彼が小走りにやってきた。

「遅れてごめんな」
「大丈夫だよ、滝沢君」

　２人はカレカノの関係になっても未だに名字呼びだった。ハロウィンの準備をするために、一緒にシーサイドアウトレットへ向かう。近況報告や互いの講義のことを語り合ううちに到着。キャンパスからそれほど離れていないため、雑談をしている間に着いてしまう。

「ん？」

　桜はふと見覚えのある人影に気づいた。もしかしたらという予想通り、茉奈とカノンだった。奇遇だねと話をする流れで、４人で買い物をすることになった。
　全員目的はハロウィングッズだが、それだけで終わるのももったいない。そこでなにか良さそうなものがないか探しながら、雑談に花を咲かせる。

「そういえばさ」

　茉奈がそう切り出すと、皆が彼女のほうを見た。

「いくつか店を巡ったけどさ、どの店でも『福袋』やってるよね。まだ正月まで間があるのに」
「それは確かに」

　正確には『福？袋』らしいが、なんにせよ珍しい。ハロウィンにちなんだものが詰め合わせになって売られているようだ。

「それなら衣装とかこれで決めちゃおうか？」

　桜の提案に全員が頷いた。いくつかの店を回って適当に目に付いた福袋を買っていく。福袋のためにアウトレットを歩き回ったのは初めてかもしれない。買い物を終えてフードコートで休憩を兼ねて軽食を取る。落ち着いたところで、いよいよ買ってきた福袋を確認する。
　一番手は桜。彼女がコスプレグッズ店で買った袋には魔法少女のコスプレが入っていた。なかなか可愛らしいデザインで気に入った。

「滝沢君のは？」
「これは吸血鬼だな」

　マントは黒と赤のリバーシブルデザインで、使い勝手も良さそうだ。

「滝沢君、それきっと似合うよ」
「そうか？　じゃあ着てみるか」

　反対側の席では同じように茉奈とカノンも中身を確認していた。

「あたしのは魔女」
「俺のは……フランケンシュタインだな」
「茉奈たちも似合いそうなのが当たったんじゃない？」
「そうね」

　カノンは身長もあるから、映えるかもしれない。
　他にも雑貨店で買った袋には骸骨のタンブラー、ふわふわゴーストのぬいぐるみ、食料品店のものにはかぼちゃタルト、目玉の飾り付きドーナツが入っていた。

「このふわふわゴーストのぬいぐるみ、かわいい！」
「結構掘り出し物が揃ったよね」
「そうね。結構いい感じに出てきたし、お得になったかも」

　４人それぞれの開封結果を改めて見てみる。
　こういう商品は自分の好みから外れることもままあるが、今回はそういったこともなかった。福袋の結果に盛りあがりつつ、来るハロウィンに一同は思いを馳せた。

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