プレハロウィンの『福？袋』｜リアクション

プレハロウィンの『福？袋』

◆ハロウィンカラー

　とある休日。
　梓智依子は娘の楓と買い物にやってきた。楓は１０月で６歳になり、来年には小学生になる。

（ほんの少し前まではよちよち歩きをしていたのに）

　時の流れの速さを感じながら、楓に視線を向ける。今では智依子のようなダンサーになりたいと言って練習に励んでいる。そして、彼女以上の才能を示していた。そんな娘の姿を見て、なんだか胸に来るものを感じる。さらに成長したら、智依子の想像を超えるかもしれない。

「ママ？」

　楓の声で我に返った。

「どうかしたの？」
「なんでもないわ」

　いつものように振舞うと、楓は安心したようで満面の笑みを浮かべた。今日は間近に迫ったハロウィンを楽しむべくやってきた。祭りを前にした、華やかで楽し気な雰囲気に楓はキャッキャしている。

（かわいいな）

　その姿を収めようとスマホを取り出した。少しも撮り逃さないようにカメラを向ける。

（それにしても、どの店でも福袋をやってるのね）

　どうやら寝子島のいろんな店で売り出されているらしい。おそらくシーサイドタウンや星ヶ丘でも販売されているのだろう。どの福袋も主張が強く、やたらと目につく。

（こういうのって結構当たり外れが大きいのよね。お手頃価格といっても外れを引いたら結局大損だし）

　福袋を前に冷静な思考を巡らせる智依子とは対照的に、楓はかなり興味津々で福袋を欲しがった。最終的にコスプレグッズの福袋と雑貨屋の福袋を購入。家に着くと楓がさっそく福袋を開けたがった。
　荷物を置いてから２人で開けてみると、雑貨屋のほうはハロウィントートバッグ。智依子は外れを引くことを懸念していたが、十分当たりといえる中身だった。そしてコスプレグッズの福袋を開けると、楓のほうにはハロウィンカラーであるカボチャ色と黒を基調としたドレスが入っていた。さっそく袖を通して踊ると、楓は気持ちいい笑顔を浮かべた。智依子のほうには魔法使いの衣装が入っていた。こちらもハロウィン仕様だ。

（これから楓を舞踏会に送り出すのかしら）

　そんなことを思いながら、ハロウィン衣装ではしゃぐ楓に温かい眼差しを送った。

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