ドーナッツてんの？｜リアクション

ドーナッツてんの？

　この春高校を卒業したばかりの稲積柚春は、不思議な噂を聞きました。
「そんなことが……？　ワットと確かめに行かなくちゃ」
　そしてウォルター・Bと共にドーナツ祭りにやってきたのです。

　柚春はたくさんのドーナツを見回します。
「流行のドーナツ……海外のもあるみたいだしアレもあるかも？」
「アレって何だい？」
「僕の狙いはフィンガードーナツ。ロンドンで流行した、揚げパンやエクレアみたいな見た目のドーナツなんだって」
「へぇ……あれみたいな？」
　ウォルターが指さすほうを見れば、まさにそんな見た目のドーナツがありました。

「これだ！　クリームやアイス、砂糖菓子でフォトジェニックなトッピングをしてるあたりもイギリスっぽいよね」
　柚春はバッグからカプセルギアのворを取り出しました。
「写真、撮るよぉ」
　心得た様子でウォルターがカメラを構えます。
「ありがとう。ぬい活もあるけど……何よりイギリスのお菓子ならワットが喜んでくれるかな、と思って」
　ворをドーナツの前に立たせポーズをとる柚春。
「じゃあ早速食べてみようか」　
　華やかなドーナツを背景に写真を撮り終えたウォルターに、柚春は訊ねました。
「ワットも日本に来て長いけど、どんなドーナツが好き？」
「迷うねぇ。揚げたのが好きかな……サクサクもふわふわもいいな」
「食感も色々あるし悩んじゃうよね……メアリさんへのお土産も買っていこうよ！」
　メアリ・エヴァンズはどんなドーナツが好きだろう、と考えながら柚春はドーナツを選ぶのでした。

「一つずつでいいの？」
　ウォルターの疑問に柚春は答えます。
「沢山の種類が食べたいから、色んなドーナツを１つずつ買ってシェアしようよ」
「いい考えだね」
　頷いたウォルターに、柚春はふと思い出しました。
「あ、でも……不思議なことが起こるって噂だよ」
「不思議なこと？」
「効果は人それぞれみたいだから、お祭りを盛り上げるための話かもしれないけど何が起こるか楽しみだな」
　飲み物を持って柚春とウォルターはテーブルに着きました。
「いただきます」
　半分こしたドーナツを美味しそうに食べるウォルターが可愛くて、柚春も笑顔になりました。
「おいしいね。今度レシピを調べてみようか」身を
　そんなふうに談笑していたのですが。
　気が付けば、ウォルターの口元から目が離せなくなっていました。
（……なんだか凄く……キス、したいなぁ）
　ドーナツが羨ましくなるくらいワットの口元を見てしまい。
「どうかした？」
「……ううん、なんでもない」
「そろそろ行こうか」

　歩きだしてもその思いは薄れることはなく、柚春はじっとウォルターを見つめます。
（抱きつくくらいなら？　でもいっぱい買い物して手も塞がってるし……こんな気分で居るのは僕だけなのかな）
　そんな柚春の眼差しに気づいてか、ウォルターはこちらを見て優しく微笑むのでした。
（ワットみたいに格好良い人が僕の彼氏なんだと思うと嬉しいような恥ずかしいような。でも、愛してるって態度で伝えたいな）
　その時、ウォルターが柚春に向けて身をかがめ。
（！）
　暖かいものが頬に触れるのを感じて、柚春の胸は高鳴るのでした。

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