ドーナッツてんの？｜リアクション

ドーナッツてんの？

「珪さん、ドーナツ祭りに行きましょう」
　６月のある晴れた日、綾辻綾花は、恋人の早川珪をデートに誘いました。
　もう生徒ではなく、誰はばかることなく手をつないで屋台を回ります。
　たくさんのドーナツを眺めながら、綾花は訊ねました。
「珪さん、どれが食べたいですか？」
（珪さんの好きなものは知ってたいです）
「そうだな……いっぱいあって迷うけど。抹茶ドーナツなんていいね」
　そして優しく綾花に訊きます。
「君は？」
「私の好きなのはネコミミドーナツです」
　笑顔で答える綾花を、珪は愛しげに見つめます。
「そうだと思ったよ」
「珪さんの好きなドーナツも買いたいです。好きなものを共有できるって良いですね」

　二人でネコミミドーナツと抹茶ドーナツを買って席に着こうとしましたが。
　綾花が息を飲み、一方を指さしました。
「珪さん、あれ！」
「……ラブラブドーナツ？　ドーナツがつながってるね。どういう仕組みだろう？」
　七夕の輪飾りのように組み合ったドーナツに、珪も興味を持ったようです。
「買いましょう」
　ピンク色のラブラブドーナツを買った綾花は、飲み物を用意してテーブルに着きました。
「組み合わせた後ピンクのチョコをかけてるのかな……ん？」
　珍しそうにドーナツを調べていた珪ですが、綾花の視線に気づきました。
「これ、珪さんと一緒に食べたいです」
「えっ？」
　頬を染めながら綾花は上目遣いに珪を見つめます。
　真剣な眼差しの意味を悟った珪は、ごまかせないと感じました。
「もう先生と生徒じゃないし……私たち」
　数秒の沈黙の後、珪は頷いたのでした。

「いきますよ」
「……ああ」
　二人はラブラブドーナツを挟んで顔を近づけました。
　そして端から食べ始めます。
（あ……真ん中まできて、すごく近いです）
　ドキドキという心臓の音が聞こえそうです。
（恋人になったけど、慣れないから……恥ずかしいです）
　食べ進む二人の唇はとても近くなり。
（あ……）
　ドーナツではない温かなものがそっと触れて。
　綾花は耳まで赤くなりながら、珪を見つめました。
（私だけ？）
　そして綾花は、顔を赤く染めている珪を、とても愛しく感じたのでした。

　ラブラブドーナツを食べ終わった綾花は、突然、胸の奥から湧いてきた思いに戸惑いました。
　その思いは言葉となり、とても言わずにはいられませんでした。
「珪さん、大好きです」
　まっすぐ見つめて笑顔で伝えます。
「僕も大好きだよ」
　珪からも告白が返ってきたのでした。

（好きな人から好きって言われるとやっぱり嬉しいです）
　幸せでいっぱいになりながら、綾花の頭をある考えがかずめます。
（もしかして神魂の影響？）
　けれど綾花の想いに嘘はありません。それなら。
（想いをを伝えあえたから、良かったのかな？）
　珪の首をぎゅっと抱きしめて、綾花は目を閉じます。
　肩に手を回され、抱きしめられるのを感じました。
（ドーナツより甘い時間になったみたい）

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