アイスアリーナでひと滑り｜リアクション

アイスアリーナでひと滑り

◆スケート練習計画

　大学１年目の冬休み。
　有沢茉奈は彼氏の閑野カノンと木天蓼市アイスアリーナへ赴いた。茉奈は商学部、カノンは芸術学部で学部が違うものの、学校の年間予定は基本的に共通のため、こういう催しに訪れる予定が立てやすい。
　カノンは実はスケートが得意。どのくらいかといえば、ここでコーチのアルバイトができるほどの腕前だ。

（イケメンで頭も性格も良くて芸術だけでなくスポーツにも才能あるんだから、やっぱりあたしのカノンは最高だよね☆）

　茉奈は心の中で彼氏自慢に耽っていた。
　一方で彼女のスケートの腕前はどうかというと、コーチできるほど得意とはいえない。それどころか、一言でいえばヘタクソだと自覚していた。

（……そこであたしは考えた。カノンにコーチしてもらおう！）

　しかしここまできて意外な事実が判明する。
　カノンがコーチをしているのは『キッズスケート教室』で、小学生が対象だった。子供たちの集まるエリアに行くと、彼を知っているようで皆が手を振っていた。
　
「お子様ばっかりじゃない！」

　茉奈は思わず頭を抱える。しかしここで恥ずかしがっている場合ではない。

（あたしはスケートに関しては、ここにいるお子様たち並みに下手なんだから！）
　
　カノンがスタッフたちに相談して、臨時で今回の教室を受け持つことになった。その流れに便乗して、半ば強引に茉奈はこの教室に参加する。子供向けの教室にもいろいろあるが、今回は初心者・初級者が集まっているようだ。そのうちの１人が茉奈に近づいてきた。

「お姉ちゃんもスケート下手なの？」
「……そうなの」

　子どもの純粋な質問に、彼女は力なく笑いながら返事をする。自分が下手なことは自覚しているし、カノンの目の前で怒っても仕方がない。こうしてカノンの指導のもと、スケート教室が始まった。

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