初雪の舞う日に｜リアクション

初雪の舞う日に

　ちらほらと雪が降る中で、羽生碧南は誰かを待っていた。
　去年の冬のあの日のことを思い起こしながら、キョロキョロとあたりを見渡して。
　白い雪の中でもはっきりと分かる姿を見つけて、手を降った。

「おまたせ。待った？」
「ううん、今来たところ」

　碧南が待っていたのは、鷹取洋二。
　片思いだった先輩――だったところが、ついに両思いとなったため、大学に入ってからも時間があればこうしてデートの約束を取り付けて、２人で共に過ごしていた。
　今日もまさに貴重な機会。そんな日にたまたま初雪が降ったものだから、洋二の頭に降り積もる雪をぱっぱと払ってあげた。
　なんだか乙女ゲームのシチュエーションにこういうのがあったなぁ、なんて考えたりもしたが、洋二の見えないところでぶんぶんと首を横に振って、邪念を取り去る。

　そうして２人はあれやこれやと会話を取り交わしながら、街の中を歩く。
　人々のすれ違いも気にすることなく、昨日起こったこと、一昨日起こったこと、大学で起こったこと、家で起こったこと、色々なことを話していく。
　２人共とても楽しそうで、雪が肌に触れても冷たさを感じることがなく。ぽかぽかと温まるような気持ちで町並みを歩いていた。

「そうだ。アレ食べてみる？」

　道中、洋二が和菓子店を指差す。そこには『初雪アイスまんじゅう』というアイスが売り出されており、ちょうど初雪が降った今ならと碧南も提案に乗った。
　雪だるまのような形のアイスの中に、甘い小豆がぎゅっと詰め込まれたアイス。２人で美味しい美味しいと呟きながら、シーサイドタウン駅前のイルミネーションを見ていた。

　気づけば空は夜の色。駅前のイルミネーションがキラキラと輝き、人や街を照らしていく。
　これも乙女ゲームの背景みたいだなぁ、なんて小さく笑った碧南。でも、今目の前にいる洋二はゲームの人物じゃなくて、リアルの人物で、碧南の恋人。
　こう言うときはなんて言えばいいのかな、なんて考えていたのもつかの間のこと。碧南は気づけば、洋二に向けてある約束を取り付けていた。

「洋二さん、また来年も一緒にこのイルミネーションを見ようね」

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