初雪の舞う日に｜リアクション

初雪の舞う日に

　朝永真深の高校１年の冬。
　今年も初雪が降ってきて、とても寒い。
　カーテンを開けて外の庭を見てみれば、薄っすらと降り積もった雪がいつもとは違う景色を彩っていた。
　緑が多いはずの庭は一晩越せば真っ白に染まり、本格的な冬に訪れを知らせる。

「……寒っ！」

　カーテンを開けっ放しに外を眺めていた真深だったが、窓の隙間から入り込んできた冷たい空気によって寒さを感じ取って布団に潜る。
　寝起きの布団は自分の体温を包みこんでいたからか、まだ温かい。このまま包まってもう一度眠ってしまいたいほどに。
　けれどそれは時間が許さない。今日もいつもと変わらぬ時間が始まり、日常が繰り広げられるのだから。

「せっかくだし、散歩してみようかな」

　寒い寒いと言いながらも、身支度を整えて散歩に行く準備をした真深。
　初雪が観測された街の中を歩いてみるのも悪くないだろうと、少し厚着をして外に出た。

　息を吸ってみると、キンキンに冷えた空気が喉に刺さる。けれど厚着をしている今、その空気は少し心地よい。
　玄関先から道に出るまで、サクサクと踏まれる雪の感触が靴裏から伝わってくる。確かに今この場所は雪が降っていると実感出来ていた。

「普段とは違うなぁ……」

　足元に気をつけつつ、滑らないようにと真深は星ヶ丘の街並みを歩いて回る。
　雪が降っただけで白く染まった世界、まるで今自分が住んでいる街とは違う街に来たような雰囲気が醸し出されていた。

　そんな中、真深の目に映ったのは期間限定で開かれている絵画展。
　『雪』をテーマに取り扱った画廊のようで、寒さを凌ぐために真深も中へと入ってみた。

「わあ……」

　『雪』と１つテーマを用意するだけでも、様々な絵が並べられている。
　冬の景色とはかけ離れた抽象画、様々な形の雪の結晶を描いた鉛筆画、オーソドックスな風景画、雪をテーマにした漫画などなど、作者の思いが詰まったものがたくさん展示されている。
　不思議なことに、テーマを聞いても『本当にそうなの？』というものも少々並べられていたため、真深は関心と驚きを見せながら画廊を歩いて回った。

　１時間も見て回れば、冷え切っていた真深の身体はぽかぽかと暖かくなる。
　全部の絵を見て回った彼女は再び外へ出て、街を歩いていく。

　雪はまだ、解けていない。
　その足取りは次の目的地を決めることなく、何処かへと進んでいく。

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