外に出たいのに！｜リアクション

外に出たいのに！

◇猫鳴館

「あれ？　出れない？」
　いつものように猫鳴館の玄関から出ようとした綾辻綾花は、首を傾げました。
　鍵はかかっていないはずの扉があかないのです。
　建て付けが悪く開きづらくなることはありましたが、今回は押しても引いても動きません。
（どうしよう。これから珪さんとデートの予定なのに……）
　大好きな早川珪先生に早く会いたいのに。
　綾花が困っていると、ほかの寮生が声をかけてくれました。
「どいてみな」
　ズシン！
　ガタイのいい寮生が体当たりしてくれて、オンボロな猫鳴館は地響きを立てました。
　しかし扉はびくともしません。
「これでも開かないなんて……」
　これ以上力を加えると、猫鳴館が崩れる恐れがあります。
「力ずくで開けようとするのはやめたほうがよさそうです」
　状況を確認しようとねこったーを開くと、他にも閉じ込められている人たちの叫びが載っていました。
『出られないよー』
『星ケ丘寮のドアが開かないなんて、こんなことある？』

（これも神魂の影響なのかな……）
　綾花はひとまず部屋に戻りました。
（珪さんに電話しよう。すぐに元に戻らないかもしれないから）
　貴重な時間を割いてくれている珪を心配させたくありません。
「もしもし、珪さん。今日のデート行けなさそうです」
『……何かあったのかい？』
　事情を話すと、珪は驚いている様子でした。
「珪さんは大丈夫ですか？　どこかに閉じ込められてないですか？」
『……本当だ、ドアが開かないね』
「閉じ込められてるんですか！？　……助けに行けないのがもどかしいです」
　焦る綾花に、珪は安心させるように少し笑いました。
『大丈夫だよ、家の中だし今日一日閉じ込められていても危険はない』
「よかった。……声が聞けて少し安心しました」
『綾辻さんこそ大丈夫なのかい？』
「こっちは大丈夫です。一人ではないですし、食料もありますし。でも」
『でも？』
「野良猫たちが部屋に入ってこれないのは可哀想ですね」
『確かに』
「今日は珪さんとデートしたかったな。本屋巡りして途中で春物の服を選んでブックカフェで寛いで……って思ってたのに」
『また今度行こう』
「はい、次のデートの約束をしておきたいです」
　綾花は予定表を開いて、次のデートを約束するのでした。
「今度は神魂の影響がないといいな。もう学校で会えないからデートは珪さんに会える大切な時間です」
『そうだね……』
　しみじみとした珪の声の響きに、綾花は思いを訴えました。
「珪さんに早く会いたいです」

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