【星幽塔】第一階層　ゴーレム山から見つける一粒の宝石｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ゴーレム山から見つける一粒の宝石

　大ゴーレムの攻撃が猛威を振るう塔の上層。
　ドッペルゴーレムはティオレとラッセルが残っており、大ゴーレムの隙間から攻撃を繰り出してくる。
　厄介なことに大ゴーレムは万歳のようなポーズから両こぶしを振り下ろす。

「衝撃に備えながら警戒、どうってことはない、わね…っ」
「奇遇だね、僕もだよ…っ」

　少しの軽口を交わしながらティオレとヴェルトは衝撃を緩和させながら大ゴーレムに接近。
　それをティオレのドッペルゴーレムが防ぐように立ちふさがる。
　ティオレは走りながら頭をめがけてショートソードを突き出す。

「所詮作り物ってところかしら」

　突き出したショートソードを引くと、ティオレのドッペルゴーレムのショートソードは行き場を無くす。
　それがフェイントだと気づいた時にはティオレのショートソードが胸を貫きコアが破壊されていた。
　ティオレの背中ではヴェルトが引き金を二つ引き、大ゴーレムの腕のコアを狙う。

「運命も時には微笑んでくれるようだね」

　ヴェルトの拳銃から放たれた弾丸は大ゴーレムの腕のコアを破壊し、片腕を土塊へと変化させる。
　そして大ゴーレムの腕の動きがずれたために空振りになったはずのもう一射。
　それが飛行していたラッセルのドッペルゴーレム、フクロウ型の頭のコアを貫いたのだ。
　大ゴーレムも黙っておらず、片腕が緩やかにしかし確実にティオレとヴェルトを狙って襲い掛かる。

「うおおぉぉおっ！」
「おーうおー」

　最初に聞こえた雄たけびはラッセルの物であり、次に聞こえたのは葵だ。
　ヴェルトとティオレが視線を上げると葵は飛びながらヴェルトにワイヤーを伸ばしていた。

「レトランジェくん、掴んでー」
「こうかい？　協力者くん」
「そういうことね？　私も飛ぶわよ」

　意図を理解したティオレは大ゴーレムの片腕にショートソードを投げ、それを足場にし、軽快に飛ぶ。
　勢いのまま葵と葵のワイヤーを一緒に掴み、ヴェルトと反対方向に大ゴーレムの腕をまたぐ。
　そうすることでワイヤーが大ゴーレムの腕にワイヤーが張られ、ヴェルトの体が勢いよく浮き上がる。

「なるほど、よく頭が狙えるってことだね」

　程よい所でワイヤーと分離したヴェルトは大ゴーレムの頭部と同じくらいの高さまで上がった。
　実はラッセルを助けたタイミングで葵が話していたのはこの飛躍。
　狙いは上手くいき、ヴェルトを上空へと連れていけた。

「やぁ。君の宝石を返してもらいに来たよ」

　目があるわけでもないが、大ゴーレムはヴェルトと視線を絡ませる。
　ほんのりと見えている頭部の宝石、そして迫る片腕のコアに照準を合わせる。
　撃ち抜ける確率は2割がいい所…と思っていたヴェルトだが、大ゴーレムに一筋の風が吹く。

「ここが、踏ん張りどころ…だよなっ！」

　一筋の風はラッセルが全力で投げた風を帯びる槍。
　大ゴーレムの頭部付近にまで届くが、惜しくも宝石には当たらなかった。
　だが、ヴェルトにとっては宝石の露出が増えた好機。これを逃すわけにはいかない。

「恨みはないけど、仕事なのでね」

　迷いなく引かれた引き金、乾いた空気に振動する弾丸、舞う砂埃を置き去りにして。
　大ゴーレムの片腕のコアに当たり破裂、そして頭部の宝石にも当たる。
　不思議と破裂はしなかった宝石は大ゴーレムから離れていき、宙を舞う。同じく落下するヴェルト。
　はてどうするか、と暢気なものではあるが、二丁拳銃はホルダーに収まっている。

「よっ…と。よくやったわね」
「いいねー、ばっちりだったよー」
「ナイスー！」

　ふわりとヴェルトを受け止めたティオレは労いをし、ゆっくりとヴェルトを降ろす。
　大ゴーレムの崩壊の余波を避けるために少し離れて座っている葵とラッセルも称賛を贈る。
　しばらくすると崩壊が落ち着き、宝石が少し発光して転がっていた。

「これで任務完了かな。みんな、ご助力感謝するよ」

　ヴェルトは懐から取り出した宝石のイラストが描かれた用紙。
　それに宝石をあてがうと光が広がっていき、視界が奪われる。
　再び目を開けると、それぞれの日常に戻っていた。

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