おばけカカシにご用心｜リアクション

おばけカカシにご用心

桜井ラッセルは広大なかぼちゃ畑を見渡して、感心したように頷いた。
「いや、絶景だなー」
　綺麗に盛られた土手、丸々と育ったオレンジ色のカボチャが並んでいる。
「カカシが飛び回ってなかったら、だろ？　腕がなるぜ！　頑張ろうぜ、桜井」
「分かってますよ！」
　ラッセルと龍目豪がお互い頷きあう。
「ところでその装備してる鍋はなんだ？」
「役に立てばと思って」
　その横で椎井莉鳥
「……これは、息抜きにしてはヘビーね」
　来年に控えた大学入試。
志望校の合格判定はＡだが、気を抜くわけにもいかない。勉強ばかりで気が滅入っていたところだ。軽い気持ちで参加したことを少しだけ後悔する。
「椎井も頑張ろうな！」
「ええ。3人で」
せっかく集まったのだから連携もしたいところだ。それぞれ武器も持っきたので有効活用しよう。
と、畑の端っこにカカシが寄って来る。
「まずは俺だ！」
　豪が一歩踏み出した。切り込み隊長だ。足元にあった鍬の先を踏んで、てこの原理で柄を立たせ、それを握る。
「軽いぜ！」　
カカシの重さがゼロになり、ふわりと浮いて、バランスが崩れた。
「でやぁ！」
　鍬を下から上へ振り上げ、鎌を弾き飛ばす。
　しかし、焦げ臭い匂いが鼻をついた。
「うお！？」
　開いたカカシの口の中にオレンジ色の光が。次の瞬間、炎が吐き出された。攻撃範囲が広い。豪は体を捻って交わす。莉鳥はバックステップで一度畑の外へと回避する。
「火まで噴くのかよ！　桜井！」
　微妙な位置にいたラッセルに炎が迫る。しかし、
「おっと」
鍵を握り締めた。その瞬間にラッセルの体が金色の翼を持つ美しい鷹に変身した。
　羽ばたいて炎を余裕で交わす。そのまま空へ急上昇し、躊躇いなく鍋をカカシに落とす。
　もう一度炎を吐こうとしていた、カカシの頭に鍋が被さり、動きが止まった。
　急降下する際に変身を解き、垂直にキック。
「よっしっ」
　かかしはラッセルの衝撃に耐えきれず、横へと倒れた。
「押さえるぞ！」
「はいっ」
　豪とラッセルは、近くに落ちていた藁で、カカシを縛り上げる。
「二人とも、来てる」
　莉鳥の声、はっとすると別のカカシがこちらに向かって炎を吐くところだった。
「来いっ」
　豪はキャンプの時に使う、消火スプレーを構えた。消火器の簡易版のようなものだが、威力はあるのだ。
　炎が吐かれる。それと同時に豪もスプレーを噴射した。
　自分が吐いた炎が押し戻される感覚があるのだろう。カカシが身構える。豪だけに集中し始めた。
「今だ、椎井」
　後ろに迫っていた莉鳥は目を開けた。指先に集中する。
（焼き払って）
　ろっこん『スタンハンド』。カカシの背中に電撃を放つ。
　強すぎる電圧と吐き出していた炎で引火、一気に燃え上がった。
「うぉ、凄いな」
「龍目先輩、退いてくださいっ」
　ラッセルが鍋を構えた。
「この辺で鎮火して置かないとっ」
　鍋を投げると、カカシの頭に直撃。畑の外へと吹っ飛んだ。地面にこすれて、炎は消えたようだ。
「！」
　莉鳥は空を見上げた。
　急降下してくるのは、別のカカシだ。着地地点から横へ飛んで回避。飛んでくる土の粒を腕で防ぎつつ、落下したそれに指を向ける。
間髪入れずに電撃。炎を吐く前なら引火する心配もなさそうだ。
「向こうの方を片づけてくるわ。この辺りはよろしく」
「了解だ。任せとけ」
　莉鳥と視線を交わし、迫って来るカカシ達に消火スプレーを向ける。
「さっきの連携で行くぞ！」
「はいっ」
　囲まれて、炎を吐き出された。ラッセルは鳥の姿で空へ、豪は体勢を低くして交わし、消火スプレーを吹きかける。その間にラッセルが鍋を落として倒す。
　莉鳥はろっこんを使って、駆け抜けながら襲い掛かってくるカカシを戦闘不能へ追い込む。
　三人で協力をして、着実にカカシの数を減らして行った。

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