シェアサイクルでいこう☆｜リアクション

シェアサイクルでいこう☆

梓智依子はぼんやりとカレンダーを見ながら昨日のことを思い出す。バイト先でのことだ。

「お願いします！！　どうしてもその日に用事があって、代わってもらえそうなの、梓さんしかいないんです！」

　同僚とのやり取りである。
　休みの交換で、突然休みになってしまったので予定は決まっていない。娘とのんびり過ごしたいところだが、でかけるのも悪くない。
　どうしようか。悩んでいると、
「おそといこー」
　嬉しそうな娘からの誘いに乗ることにした。
　手を繋ぎながら、玄関を出る。
「……どうしたの？」
　歩き始めてすぐ、娘の楓が車道を走る自動車を目で追っていることに気づいた。
「ままも車の運転するの？」
「今は、しないかな？」
　免許を取ろうと思えば取れる年齢だし、将来は取ることになるかもしれない。
「そっかー」
「乗りたかったの？」
「うん、ママが運転する車」
「そうね、いつか。乗せてあげる」
「わーい！」
　嬉しそうな楓に智依子は優しく頭を撫でた。
「あ、ママ、あれ何？」
　シェアニャークルの駐輪場だった。可愛いデザインの自転車が並んでいるので気になったようだ。
「あそこで自転車を貸してくれるのよ」
「借りられるの？」
　智依子は笑って、
「乗ってみる？」
「うん、乗りたーい」
　そんなやり取りがあり、シェアニャークルのアプリをインストールすることに。
　手続きは思いの外簡単で、すぐに終わらせることが出来た。
「ママ、これが良いな」
　駐輪場内に入って自転車を選んでいると、楓が黒猫デザインの自転車を指でさした。確かに子供用だが、小学生くらいからだろう。
「ママと一緒に乗りましょう。こっちにも自転車があるから」
　４歳の楓はチャイルドシート付きの自転車でないと乗れない。
　検索したらすぐに見つかったが、子供と二人乗りを想定して、より可愛らしいデザインが採用されているようだ。
「これ！　これが良いー！」
　モコモコ白猫のチャイルドシートがついた自転車である。
「じゃあ、これにしましょうか」
　楓をシートに乗せて、智依子も自転車にまたがる。体を浮かせ、勢いよく走り出す。
「きゃー！」
　楓がはしゃいだ様子で足をバタバタと動かした。よほど楽しいのだろう。
「ママー、風がつよーい」
「そうね」
　智依子はくすくすと笑う。徒歩やランニングをしたくらいでは味わえない速さだ。
　適当に周辺を巡る。
「運転うまいですね！」
「ふふ、ありがとう。じゃあ、お菓子でも買って、帰りましょうか」
「うん！　おやつだー」
　買い物をして、自転車を返し、帰路に着くことにした。

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