ネコンビ物語｜リアクション

ネコンビ物語

●新生活にむけて

　三折部朝衣は仕事を終えると、長袖を羽織って職場を後にした。夏の終わりと秋の訪れを肌で感じる。冬が来るのもあっという間かもしれない。仕事は１０月に入ってから少し落ち着いてきたので、そういう面でも過ごしやすい日々だ。

「少し予定より遅れてる……早く彼のところに向かおう」

　彼女は時間を確認すると少し駆け足になった。
　向かうのは住沢遥人のところ。恋人改め婚約者となった相手で、彼との同棲生活に向けて色々と準備を進めてきた。今日はその最終打ち合わせで彼の住むアパートに行く約束をしていた。アパートに着くと部屋の呼び鈴を鳴らす。

「待ってたよ」

　遥人は笑顔で彼女を出迎えた。今度の土曜日にはこの部屋に引っ越すのかと思うと、彼女は少しだけ不思議な気持ちになった。
　温かい飲み物を用意して２人は話し合いを始めた。話し合うといっても、すでにお互いの両親には挨拶を終えているし家事の役割分担やお金の管理に関するルールなどはもう決めてある。
　だから今日は部屋の模様替えなど、今後の生活空間についての話を進める。

（もっとも、前に決めていたことを改めて確認するだけなのだけど）

　話し合いは談笑交じりにつつがなく進んだ。ふと時計を見るともう８時過ぎだった。

「もうこんなに過ぎたの？」
「どうりでお腹がすくわけだ」

　２人で晩御飯をどうしようかと話しながら外に出た。気分転換も兼ねた散歩道で、ネコンビを見つけたので入ってみる。

「近くにコンビニがあると便利よね」
「そうだね」

　２人は置いてある雑誌の話題に触れたり、ちょっとしたお菓子やねこびんちゃんグッズをカゴに入れる。
　そんな風に店内を巡っているとハンバーグ弁当が目に入った。どうやら期間限定の商品らしい。

「青錨亭ハンバーグ弁当……青錨亭？　これって遥人の店じゃないの？」
「ああ。この前企画が持ち込まれたから協力したんだ」
「ちゃんと遥人の味を再現できてるか、試してみるわ」

　そんなわけで弁当とお茶を購入すると、イートインコーナーで一緒に食べる。買った弁当の感想などを１時間ほど話して過ごした。

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