ある秋の風物詩｜リアクション

ある秋の風物詩

　寝子高の近所を歩いていた月原想花は、何かが焼けるようないい匂いに足を止めた。辺りを見回して、いい匂いが漂ってくる先を探す。匂いをたどって現場に赴くと、ととお理事長の姿が目に入った。
　話を聞けば、焼いもパーティーをしているらしい。いもが中に入っているのであろう焚火からは煙が上がっていて、それもあって周囲は少し気温が高いように感じた。

（まだ残暑も厳しいのに、よく焚火なんかできるよなあ）

　そう思いつつも、想花のお腹が空いていたのも事実で。
せっかくの機会だから、そう思って焼きたてほかほかの焼いもをいただくことにした。熱くて甘くて、それでいてほくほくしていて美味しい。

（やっぱり焼いもって焼きたてがいいよね）

　想花が焼いもを１つ食べ終えるまでの間に、焼いも以外にさまざまなものが用意された。マシュマロ、パッキー、他にもリンゴやバナナといった果物類が臨時に設置されたであろうテーブルに置かれている。果ては鉄板を敷いて、そこで焼きそばやらお好み焼きやら焼き始める人もいる。

（もう、なんでもありだよね）

　想花のお腹はまだ満たされていない。普段は少食だが、今日はもっと食べられる気がした。
　出来上がった焼きそばやお好み焼きを紙皿に取り分けてもらって、食べる。
　秋鮭のホイル焼きも同じように紙皿にもらって、食べる。
　どれもこれも美味しくて、ついつい手が出てしまう。そうやって食べているうちに、空いていたお腹は満たされていた。

「ごちそうさまでした」

　腹ごなしに落ち葉などのゴミを拾う。拾ったゴミのうち燃やしてもよさそうなものは、焚火にくべる。そうしていくらか拾ってはくべてを繰り返しているうちに、またお腹が空いてきた。
　今度は、焼肉やピザなどがふるまわれていた。先程と同じようにもらって、食べる。
　さらにデザートとして焼きマシュマロや焼きリンゴ、焼きバナナをもらって、食べる。
　普段の想花からは想像ができないほど、なぜか今日は思い切り食べまくった。

（たまには、こういうのもいいよね）

このページにイラストを設定する