こどもキャンプへようこそ！｜リアクション

こどもキャンプへようこそ！

　ランタンの明りが照らすキャンプ場内。
　広場ではグループごとに丸くなり、夕食を食べていた。
「んむんむ。最高ッス」
　魚の塩焼きをかじった桐子が満足そうに頬に手を当てる。
「美味しい。お姉ちゃん……食べたらどんな顔をするかな」
　姉に初めて〇〇を食べてもらったという企画を思いつき、少しにやにや。
「は～。お腹いっぱい。もう少しおすそ分けすればよかったなー」
　雄太の呟きに、
「あれで満足だって言ってたから、問題ないさ」
　しれっと言われ、目を瞬かす。
「え？」
「さあて、この後は肝試しだけど三人とも参加するのかな？」
「友達と約束してるから、参加するよ！」
　奏子が手を挙げる。
「僕も参加すると思う」
　何せ女子も多い。
（怖がりの女の子を助けてあげたいし。怖すぎて抱きつかれたら……それはしょうがない）
「うちは、ここで待機が良いっスねー」
　直火で焼いていた魚を自分の皿へ。こんがりと焼けたそれは、最後に取った主のような大きさの魚である。
「あーむ」
　しょっぱいくらいの塩加減が最高だ。
「ふむ。じゃあ、この辺で起きたおかしなお話を一つ」
　道哉はこほんと咳払い。
「肝試しをする山道の途中に小さなお祠がある。これは本当にあるんだけどね。噂に寄るとその後ろにお地蔵さんがあるらしいんだ。普段は目を閉じているけど、時々目が開いてるんだってさ。それを見てしまったが最後。誰もいない世界へ引きづり込まれてしまうらしいんだ。本当かどうか確かめるのも良いけど、目を閉じてることを祈るしかない。十分気をつけて」
　三人はごくりと喉を鳴らす。
「まあ、噂だけどね」
　神妙な顔になっている三人に片目を閉じて見せる。
（夜、一人でトイレいけるかな）
　行ける自信はあるが、万が一そんなことになったら大変だ。

　数十分後。
　奏子は肝試しイベントのスタート地点にいた、牛乳パックで作ったＬＥＤライトを手にしている。昼間のメンバーを探すが、雄太も桐子も道哉の姿もない。
「ね、私達の番だよ！」
　仲の良い友達二人と、入り口へ。
「はい、行ってらっしゃーい」
　送り出されて、いざ山道へ。
「うあ……思ったより真っ暗」
「こっわ。めっちゃ怖い」
　びびりまくっている友人達に奏子は拳を握り締める。
「大丈夫。お兄さんお姉さん達が見てるはずだし！」
　そう声をかけつつ、二人を励ますが、
（ひうっ）
　山道の先に小さな祠を見つけてしまい、全力でスルーしたのだった。

翌日
お昼前に集合がかかった。
昨日のメンバーの三人と一緒に並ぶ。
「では、これでキャンプを終わりにします。楽しめましたかー？」
小学生達が元気よく声上げる。
「うはー。楽しかったッスね！」
「ああ、また参加したいな」
「うん。あれ、お兄さんは……？」
道哉の姿がない。ボランティアだと言っていたので、帰ってしまったのだろうか。
子供達が集まっている場所から離れた木の陰。
「なかなか、良いイベントだったじゃないか」
道哉も思う。
「また参加したいものだね」

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