モーモーリヴァーシ！　いざ勝負！｜リアクション

モーモーリヴァーシ！　いざ勝負！

「それでは、始めるぞモ～」
「それはいいけどどうやって動かすのかしら？」
　遠海が首をかしげます。
「駒は牛。牛王の言う事だとしても聞いてくれるとは限らないだろう」
　月詠も言いました。
「わしが数字を言うから、その場所に牛を誘導してくれ。１はここ。まず縦の列の数字、次に横の数字を言う」
　黒牛王に説明され、それに従って誘導してみることにしましたが。

「牛さん、こっち、こっちに来て。あっ、そっちじゃなくて」
　やっと動いたと思ったら、反対のほうへ向かってしまう牛。
　実際のリバーシと違って、牛を動かす訳だからどうしても骨が折れます。
　なにしろ牛は勝手に動くし、動きたくないときはテコでも動きません。
　そんな牛さんたちを宥めたりしながら、遠海はどうにか指定されたマス目のところへ移動させました。
「で、今度は挟まれた牛をペンキでひと塗りするのね」
　教わった通りに、刷毛を手に白い牛を黒い牛に変える遠海。
（これだけで結構疲れるけど……）
　ひと塗りしただけでみるみるうちに白い牛が黒くなっていくのを見るのは、結構楽しかったりします。
　しかし、動かなくてもいい牛が勝手に歩き出したりして、蒼は慌てて引き止めました。
「いい子だからここにいてよ」
　そんな様子を見ながら月詠はつぶやきました。
「言葉は理解しているのだろうが、そこにいてと言っても勝手に動くだろう。牛だもの。仕方ない」
「えー……どうすりゃいいのよ？」
　始まったばかりでこれでは、牛が増えたらどうなるのかと先が思いやられます。
「ただ、盤面が埋まっていくほど言う事を聞いてくれるだろう。牛だもの。群れていると安心するのだ」
　白牛女王の指示に答え、月詠も牛を動かします。
「動かす時はまず相手の視界にゆっくり入って声をかける。吃驚させないようにする為だ。ここにいると示してからゆっくり触って押してやり、目的地についたらパッと離れる」
　盤面の図を確認し、月詠は刷毛を塗料に漬けます。
　塗料でペッとひと塗り、よしよしと撫でてやりました
「この際他の牛がついてきても気にしない。牛だもの。単独行動は不安になるものだ。
駒の制限時間はけっこう長いだろうし過ぎても許してくれるだろうとみている。牛だもの。せかされるのは嫌いだろうからのんびりゲームをやろう」
「うむ、問題ないモー」
　黒牛王はゆっくり首を振って頷きました。

　一方蒼は、ゲームが進むにつれて首を傾げます。
「要するに女王の指示通りに牛を移動させればいいわけだけど……」
　ゲーマーの蒼からするとどうも白牛女王の指示はどこかピントがずれてて、ちょっと危なっかしい感じがするのです。
（といって、プライドの高そうな女王に、それをストレートに指摘したらますます頑なになってしまうよね？）
「次、二５ですモー」
　指示を聞いた蒼は女王に向き直り、声をかけました。
「女王様のお考えはご尤もです」
「当然ですモー」
　不審げにこちらを見る女王牛に蒼は言葉を選びながら意見します。
「でも戦いは高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応することも必要です」
「？　どういうことですモー？」
「例えばあのマスに白牛を置くことで、黒牛が置ける場所を減らし、その分白牛を置ける数が増えます」
　全体の状況を的確に把握した蒼の助言に、白牛女王は黙って考えていましたが、ゆっくりと首を上下しました。
「なるほど……一理ありますモー。その手を採用しますモー」
「ありがとうございます」
　蒼の進言は、白サイドを有利に導いたのでした。

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