杏仁豆腐日和｜リアクション

杏仁豆腐日和

　４年生の森篠奏子は、水泳の授業のため寝子小プールサイドにいた。
（今日は日差しが強いなあ。早くプールに入りたい……）
　と思って水面を見たら、なぜか白かった。
「というか固まっている？」
　そう思った時、ほのかに甘いにおいが漂ってきた。
「えっ？」
　消毒の匂いならわかるけど、この場にあまりにもそぐわない匂い。
　奏子はプールに近寄り、水面（？）を指先で突っつく。
　プルン。
　その感触に、まさか……と思いつつ。
　奏子は少し掬って食べてみた。
　思った通りの、甘い味。
「うそ……なんで杏仁豆腐が？」
　確かにおいしいけど、解せずに首を傾げる。
　ゴゴゴゴ！
　だがその時、地響き（？）とともに杏仁豆腐が盛り上がり、そこから何かが現れた。
「ド……ドラゴン？」
　あっけにとられる奏子と子供たち。
「何で杏仁豆腐からドラゴンが現れるの？　ていうかこんなところで暴れたら大変なことになっちゃう！」
　何とかしないと、と思う奏子だが。
「でもどうやったら倒せる？」
　そう簡単にいいアイディアは湧いてこない。

　寝子高生の光村日向は、妹の忘れ物のプールバッグを届けに小学校にやってきた。
　だが教室にはおらず、教室にいた子に聞いたらプールへ向かったとのことで、プールまできたが。
「ここにもいない……どこへ行ったんだ？　えっ？」
「あんにんどうふだ！　ドラゴンだ！」
　数人の子供たちが騒いでいる声にそちらを見ると、プールの白い水面から飛び出している怪物を発見した。
「やけに白いけどあれって……杏仁豆腐のドラゴン！？」
　目を疑う光景に、まず日向が案じたのは妹のことだった。
（妹は！？　巻き込まれてないか……鉢合わせする前に僕が何とかしなきゃ！）
　だがあたりに妹の姿はない。
「……入れちがいになったのかな」
　後でわかったことだが、日向の妹は人を呼んだり、遅まきながら水着を持ってきていないことに気づいたりで教室に向かっていた。
　代わりに、妹と同じくらいに見えるセミロングの女の子に声をかけられた。
「お兄さん、誰？　助けに来てくれたの？」
　奏子の問いに日向は、安心させようと笑顔で言う。
「妹のプールバッグを届けに来たんだけどね。なんとかしなきゃね」

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