羊がたくさん、めぇめぇめぇ｜リアクション

羊がたくさん、めぇめぇめぇ

　◆第二章「ねむねむパワーのひみつ」

　風の噂で寝子島にいる羊の話を知った逆巻天野は、猫と羊用の餌と毛刈りの道具を用意していざ寝子島のシーサイドタウンへ。
　既に羊達は猫達と言い争いをしており、辺りはにゃあとめぇの大合唱。微笑ましいと思う反面、少々うるさい。

　天野が辺りを見渡していると、同じように羊に驚いている神野美野梨を発見。彼女は何処からこの羊が来たのかを調べていたようだが、あまりの数にびっくりしてしまったようで。
　美野梨は天野の存在に気づくと、羊達の群れに気付かれないように合流。お互いまだ羊を見つけたばかりで情報が少ないため、考察から始まった。
「逆巻くん、この羊って何処から来たと思う？」
「僕が覚えている限りじゃ、島には羊を放牧している場所は無いから……誰かが具現化させた、とかかな？」
「うーん、やっぱりそうなっちゃうわよね」
　ちらりと視線を猫と羊に向けてみると、猫達が少しずつ鳴き声を減らしている。
　どうやらねむねむパワーによって猫達が抗えない眠りに誘われ始めており、周囲で見守っていた住民達も少しずつだが眠気を誘われ始めていた。
　美野梨にも少し眠気が襲いかかってきていたが、様々な疑問が頭の中に湧いて来て、不思議と目が覚める。生活部員の探究心はねむねむパワーを打ち砕くことに成功したようだ。

　だがこのままでは天野も美野梨もいずれは眠ってしまう。そうなる前に羊をどうにかしなくてはならない。
「毛を刈るとねむねむパワーの放出が止まるって聞いたから、本当かどうかも確かめてみなくちゃ」
「ああ、そうだな。……お、あの辺りはまだ活発そうだな」
　天野が指差す先では、また新たな鳴き声バトルが始まっていた。天野は手持ちの餌を準備すると、ステイステイと呟きながら両者の間に割って入り、猫に餌を与えて宥め始めた。
　当然、邪魔をするなと言わんばかりに鳴く羊達。そんな羊達に対して視線を巡らせた天野は、一番絆しやすい羊を見つけては餌と手を差し伸べ、ゆるゆると撫でた。
「よしよし、良い子だね。君は毛並みが綺麗だねえ」
　餌を食べながら褒められ撫でられを受けた羊は、めぇ、と一鳴きした後に天野に懐く。もふもふの毛は天野の身体を包み込み、最高の安らぎを与えてくれた。
「あっすごい……この毛並み、なんだ……この……」
　幼い子供の頃、誰もが想像したことがあるだろう。もこもこの羊の毛に埋もれてその中で眠る夢を。天野はその夢を実現させたのだ。
　だがまだ足りない。１匹の羊で満足しているようでは、夢を実現させたとは言い難い……。

　そこで天野は美野梨にも声をかけ、羊達を褒めてゴロゴロし始めた子を集めてほしいと頼み込んだ。
「うん、いいわよ。私もちょっと気になることがあるから、手伝ってくれると嬉しいな」
「気になること？」
「ねむねむパワーが何処から出ているのか、毛だけなのか全身なのか……比較実験をしてみたいの。私が眠ってしまうと研究が出来ないから……」
「なるほど、そういうことなら協力しよう。まずは羊を集めるところから、だな」
　うん、と２人で顔を見合わせた後、二手に分かれてそれぞれ羊を集めることに。

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