大盤振る舞い！　異世界ショッピングツアー｜リアクション

大盤振る舞い！　異世界ショッピングツアー

月守輝夜はキラキラとした明かりが煌めく、露店街にいた。説明を聞いた通り、ここは異世界のようだ。
隣りには青木慎之介がいて、同じように目を輝かせている。どうやら二人一緒に当選したようだ。
　と、声をかけられた。
「寝子島からのツアーのお客様ですね？　お客様方専任のツアコンを務めます、ルナナです！」
　和服ワンピースに黒髪白うさ耳の女の子だった。
「よろしくお願いします」
　輝夜は頭を下げ、慎之介は手を挙げた。
「ああ、よろしくな」
　ルナナはにっこりと笑って、ショッピングツアーの旗を振った。
「まずはあたしのおすすめのお店へ行きましょ！」
　当たり前だが初めて来た場所だ、お任せで連れて行ってもらえるのはありがたい。そして、ルナナに案内されたのは、様々な時計が売られている露店だった。
　夜店のビニール製の屋根に煌びやかな電球が下がっている。店には時計がずらりと並んでいて、ホログラムが浮かび上がっていた。
「綺麗」
「おお。未来の世界っぽいな」
と、慎之介が時計の隣のスペースを指で指した。
「これ、月守が好きそうだな！　キュートだ」
「え？」
　見ると、ぬいぐるみのエリアだった。
　慎之介が言っているのはうさ耳を持つ、尻尾の長い猫のような生き物のぬいぐるみだった。
「可愛い……！　もしかしてこの世界の動物の一種ですか？」
　ルナナは笑顔で頷いた。
「種類はラビキャですね。見た通り、うさぎとねこの特徴を併せ持っています」
　これはぬいぐるみだが、ペットとして人気があるらしい。
　と、慎之介がぬいぐるみを持って、輝夜に渡してきた。
「あ、ありがと」
「良いって」
　そう言って、露店のおじさんに支払いを済ませる。スマートに買ってもらってしまった。輝夜は渡されたぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
「あ」
　かなり抱き心地が良い。
「それ、ラビキャの触り心地を再現しているんですよ」
　ルナナが言う。
「こんなふわふわな生き物なんですか？」
「他の世界では珍しいんですかね？　町の外に行けばたくさん生息してますよ！」
　聞けば聞くほど不思議な世界だ。
「おッ、なんか良い匂いするな。月守、食べ物の屋台もあるみたいだぞ」
輝夜は嬉しそうに指をさす慎之介をちらっと見た。
（慎之介君とお揃いのものほしいな）
センスが良いので彼に選んでもらいたい。そんなことを考え、さりげなく伝えてみることにした。
「ん？　記念に何かほしい？」
「何が良いかなって。どうせだから慎之介君も選んで下さい」
「確かにこんなところに中々来られないしな。えーっと」
慎之介は隣の露店へ移動した。
少しドキドキする。
「彼氏さん、何を選ぶんですかね？」
「！　ど、どうですかね」
改めて彼氏と呼ばれると照れる。
　と、慎之介が戻って来た。
「ほら、どうだ、これ」
　見せて来たのは、うさ耳カチューシャだった。
「あ」
　カチューシャ自体は可愛く、テーマパークでつけて歩きたいデザインだ。輝夜はピンク、慎之介は黒である。
「あは皆、お揃いですね」
　ルナナが楽しそうにいう。
　ぬいぐるみも合わせてお揃いだ。
　とは言え、少し残念だ。
（こういうのじゃなくて、常に持ち歩けるような）
　そんなことを考えていると、目の前にシルバーの細い鎖にウサギのワンポイントが入ったブレスレットがぶら下がった。
「これはおまけだ。おれとお揃いな！」
　慎之介はすでに腕につけているのだが、同じデザインでワンポイントが三日月だった。
「あ……ありがとうございます」
「さて、そろそろ食べ歩きの時間だな！　ルナナ、おすすめは？」
「わた飴ジュースと雲バーガーですかね！」
　ルナナがすぐに買って来てくれた。見た目は綿あめ、かじるとジュースが口の中に広がる。それから雲バーガー。ふわふわしたバンズに挟まれた柔らかいお肉が美味しい。この世界の牛肉だそうだ。
「んー！　雲バーガーボリュームあって美味いな」
「うん、わた飴ジュースも冷たくて美味しい」
　慎之介と笑い合う。それから、ルナナの案内でほとんどの店を回った。そして、ツアーはあっという間に終わったのだった。

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