いつのことだか、あの瞬間。日常編｜リアクション

いつのことだか、あの瞬間。日常編

●新弾発売

　白真白はカードゲームの売り場にやってきた。
　今日は彼女がプレイしているシリーズの新弾発売日だ。他にも同じ目的と思われる人々が来ている。

（今回の弾では私の使ってるデッキタイプが結構強化されるから、いいカードを当てたいところ）

　デッキを構築するゲームは、新しいカードを定期的に発売する。事前にどういうカードが含まれるのか情報も公開されるので、いま自分が使っているデッキとの相性を考えて購入する。

（欲しいカードはレアリティ問わず何種類かあるけどその中の一つが高レアなんだよね。自力で引けなかったらシングル買いすればいいのだけれど、やっぱり自力で当てたい）

　カードのパック購入は中身が分からない上に、強いカードほどレア度が高く、出る確率が低い。カードショップでは１枚単位で売られているが、彼女としては愛着の違いもあるのでパックから直接引き当てたい。
　そんな思いを胸に新弾パックの束を購入し、さっそく開封する。

「１パック目は……むぅハズレ。欲しいのは無し、と」

　大量に買ったうちの１つとはいえ、欲しいものが無いのは少し寂しい。気を取り直して２つ目を開封する。

「次は……お、これは必要だった奴だ。ノーマルカードとはいえ使い勝手がいいんだよね」

　レア度が高いほど強いのが基本だが、組み合わせ次第で変わるので、たとえ単体では強くなくても使い勝手の良さは重要。

「よしよしどんどん開けていこう」

　次を開けて、カードを確認し、一喜一憂しては使うかどうか振り分ける。そんな工程を繰り返していき、気づけば最後の１パックとなった。

「今のところ引きは良い感じ。あとは目的の高レアカードさえ引ければ……」

　今まで開けたカードたちを眺める。
　新弾の情報で把握していたカードのうち、ノーマルやレアは揃った。しかし高レアはなかなか出ない。目的でない高レアも出ていないので今回のパックはシビアなのかもしれない。どう足掻いてもこれが最後の１つ。意を決してパックに手をかける。

「……よし、開封！」

　最後のパックは慎重に１枚ずつ確認する。
　新弾の情報と、これまで開封した分でだいたい中身は把握した。それでも未だに高レアを見ていない事実が彼女の気持ちを焦らせる。そして、最後の１枚にようやくそれが現れた。

「……やった！　当たった！　よしよしよし、これだよ、これがほしかったんだよ」

　ついに目的の高レアを引き当てて、喜びをかみしめる。

「はぁ……引けて良かった。早速デッキに入れよっと。他のパーツもいい感じに引けてるしね」

　真白はカードを整理しながらデッキの調整を始めた。それらを眺める彼女の表情はとても生き生きとしていた。

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