【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭｜リアクション

【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭

　今日も花咲夢乃は部室棟にあるアイドル活動研究部に速足で向かう。
　ツインテールを弾ませて部室の扉を開けると舞台用の衣装を手にした。縫製された部分に目を近づける。
　――最近のミシンは優秀で助かりますわ。雛鳥をイメージした衣装は愛らしく、この放射線状の羽は巣立ってゆくアイドルに相応しい装飾ですわ。
　生地を指で摩る。
　――選び抜いた生地だけあって、とても滑らかですわ。着心地の良さはパフォーマンスの向上にも一役買ってくれますの。
　目を細めた夢乃は椅子に座った。ミシンと向き合い、作業途中の衣装に取り掛かる。小気味よい音を立てて飾りを縫い付けていった。
　間もなくして部長の喜矢武あいおが部室に現れた。二人の新入生も一緒だった。
「夢乃、お疲れ様ですよぉ。衣装づくりは順調です？」
「問題ないのですわ。最新のミシンのおかげですわ」
　手を止めた夢乃がにっこり笑って答えた。二人の新入生は小走りで衣装の出来を見た。ほぼ同時に、素敵、と呟いた。
　あいおは遅れて近付き、後ろ手に持っていた飾りを夢乃に差し出す。
「僕も衣装用の飾りを作ってきたのですよぉ」
「可愛らしいのですわ」
　夢乃は受け取るとふんわりとしたスカート部分に縫い付けた。

　一同の意見を取り入れた三着の衣装は完成した。話はステージに移る。
　あいおが部長として発言した。
「新歓祭の主な舞台は講堂です。多機能ですが、少し狭く感じます。第一グラウンドの方がステージは広くて、ダンスの見栄えもいいと思うのですよぉ」
「部長の言う通りですわ」
「わたしも」
「第一グラウンドでやりましょう」
　皆の意見が一致した。あいおは両方の掌を打ち合わせた。
「僕が部長として申し込んでおくのですよ。あとは演出ですよぉ。ダンスのテーマは決まっていて、卵から孵った雛が元気に羽ばたく感じです。バラバラの踊りが成長して、最後は揃って綺麗に決めたいと思いますよぉ」
「難しい演出ですの」
　夢乃は目を伏せて言った。
「そうです。最初のバラバラの状態が下手に見えると台無しですよぉ。そこで最初は三人が離れた状態で踊り出して、徐々に近づいて中央で揃うという演出を考えているのです」
「良いと思います」
「そうですね。花咲さんはどう思う？」
　新入生の一人が目を向ける。
「最初の待機するところを、上手く演出……そうですわ！」
　閃いた内容を早口で伝える。全員が目を輝かせて頷いた。

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