＜エイプリルフール＞おにぎりVSパン｜リアクション

＜エイプリルフール＞おにぎりVSパン

　◆第一章「焼きたてのパンは最高！！」

　おにぎり島のとある広場にて。
　パンケーキの被り物をしているリリエル・エーテライトは周囲を見て回っていた。
　なんせ、島では今やおにぎりとパンの被り物をしている人々が、ピコピコハンマーとヘルメットを使って争い続けている。
　おにぎりが良いか、パンが良いかという至極単純ではあるが奥が深い戦い。戦う前に語り合う人々の様子が見られるのだが、これがまたどちらの言い分もよく分かる内容だ。

「私もパン派として、がんばリリエルです！」
　ぐっと拳を握りしめたリリエルはパンケーキの帽子をぽんぽんと叩きながら、ゆっくりと周囲を探索する。
　すると、リリエルはとある喫茶店……『猫の宮』と呼ばれる店の前で、店主がおにぎりの良さについて語っているところを目撃する。彼はどのようにおにぎりが良いかとホワイトボードを使って説明しており、周りにいるおにぎり派の人々を納得させていた。
「むむっ……！　おにぎり派の人、発見です！」
　ビシッ！　とリリエルの指がおにぎり派の集まりを指差す。その様子に店主である猫乃宮ヤマトがリリエルの声に気づき、ホワイトボードの内容をすべて消した後にリリエルの前へ。
「おや、パン派の人だね？　目を合わせた、ということは……わかってるかな？」
「もちろん、勝負です！　恨みはないですが、パン派のため勝負です！」
　店舗の前に設置されたたたいて・かぶって・ジャンケンポンの設備。それを使い勝負をするということになるだろう。
　だがしかし、このまま普通に勝負してはパン派の良さというものは伝わらない。そこでリリエルは先程ヤマトがやっていたように、ホワイトボードを使ってパンの良さを伝えることに。

「パンの良さと言ったら、やっぱり焼きたてのパンのいい匂い！　香ばしく焼かれ、その匂いは食欲を沸き立たせてくれるんですよ！」
　ホワイトボードにパンとおにぎりの絵を描いて、線を引いてその真ん中の枠におにぎりに使えずにパンに使える食材―――ジャム、バターといった定番のものから、パンに挟めるレタスやトマトと言った名称をつらつらと書いて、丸かバツかで印をつける。
　そして極めつけは、彼女の得意料理なパンケーキ。実際は焼く方のパンとは関係のない語源のパンケーキだが、パンに似ているのでそれはそれで良し。
「だから、パンは最高なんですよー！」
「ほほう、なるほどね。そちらの言い分も最もだ」
　ヤマトは彼女の演説に程よく納得している。これは勝てれば、彼をパン派に引き込めるだろうというリリエルは、ここぞとばかりにたたいて・かぶって・ジャンケンポンの準備を始めた。
「さあさあ！　本当の勝負はこれからです！」
「よし、それじゃあ勝っても負けても恨みっこなしだよ！」
　リリエルとヤマトの数秒のにらみ合いが始まり……そして、じゃんけんの掛け声が周りから起こる。
　結果は幾度かのあいこが続いたが、リリエルがパーでヤマトがグー。当然だが、リリエルが攻撃側となる。
　だがしかし、焦ったヤマトはピコハンを手にとって防御しようとしてしまい、僅かに防御のヘルメットに手を伸ばすのが遅れてしまった！
「それーーー！！」
　ピコン、と。ヤマトの頭をリリエルが叩く。防御のヘルメットが被られる前にピコハンが当たったため、リリエルの勝利だ！
「そ、そんな……！　疾風のヤマトと呼ばれた僕が……！」
「うふふっ、私の勝ちです！　さあ、あなたもパン派のために戦いましょう！」
　ヤマトのおにぎりの被り物を外し、何処からともなく取り出したパンケーキの被り物をかぶせたリリエル。何処に隠してたんだとか言ってはいけない。
「この調子でドンドン、パン派の仲間を増やしますよー！」
　えいえいおー！　と腕を上げ、元気よく歩くリリエル。なお、猫の宮はパン派の集まりになったのは言うまでもない。

　こうしてまた、おにぎり派が減ってパン派が増えたのだった……。

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