星ヶ丘寮の新年度｜リアクション

星ヶ丘寮の新年度

☆久しぶりの星ヶ丘寮で

　先月寝子高を卒業した三宅葉月は、用事があって星ヶ丘寮を訪れました。
　現在は星ヶ丘にあるアパートの一室で一人暮らしをしている葉月です。
　その用事も予想外に早く済んだので、少し時間を余し気味になりました。
（せっかく来たのだから、少し寮を散歩しようかしら）
　しかしすでに自分の居場所がない寮で時間を潰すというのも落ち着かないものです。
　話し相手でもいるなら別だけれど……と思ったとき。
「……あ。こんにちはぁ～」
　声をかけられてそちらを向くと、黒と白のツートンカラーの髪の少女が立っていました。
「……こんにちは」
　挨拶を返しながら、葉月は見知らぬ少女を観察します。
（……不思議な感じの子。新入生？）
　なんといっても白と黒に染め分けた髪が目立ちます。
　アンニュイで、気だるげに見える少女でした。
　葉月は葉月で、ゴシック調の私服を着て、アンティークドールか森の精霊のような不思議な雰囲気と容姿を持っています。
　並んで立つと二人の独特の雰囲気のおかげで現実とは思えない景色が出来上がっていました。

「私、今年入ったばかりでぇ～、あ、芸術科の黒白滴と言います～。寮内をあちこち見て回っているところです～」
　気さくに話しかけてきた下級生に、人見知りする葉月もなんとなく気軽に答えていました。
　たまたま出会っただけで、これから深く知り合ったりすることはないでしょう。
　芸術科の先輩として、何か参考になる話でもできれば、と葉月は思いました。
「私は今年卒業した三宅葉月。用事があって寮に寄ったの。私も芸術科で、絵を描いていたわ」
「先輩もですかぁ？　私も描いてます～。鉛筆画なんですけど～」
「あなたも？　私は色鉛筆が好きで使っているんだけど、あなたは？　どんな絵を描くの？」
　葉月の問いに、一瞬沈黙した滴は口を開きました。
「私はモノクロの絵が好きなんです～。どんな絵、というのは……これは人にはあんまり言わないんですけどぉ」
　滴は葉月を見極めるように見つめ、言いました。
「先輩は卒業してるし、せっかく同じ鉛筆画好きだから言っちゃいますね～。私、死をテーマにした絵とか作品に惹かれるんです～」
「そうなの？」
　わからないでもない、と葉月は思いました。
「そうなの。私も時折そういう絵を描くわ」
　そう言うと、滴は笑顔になりました。
「そうなんですね～。先輩の絵、見てみたいです」
　そんなことを話しつつ、寮の時間はゆっくりと進んでいくのでした。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：茄子りんこ
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございました。
まだそれほど大きな動きのない、いつも通りの星ヶ丘寮を書かせていただきました。
はたしてこのまま穏やかに、いつもと変わらない日々が続いていくのでしょうか？
新年度は始まったばかり、皆様のご活躍を楽しみにしています。

それでは、ご縁がありましたらまたのご参加を楽しみにしております。

↑ページトップに戻る