星ヶ丘寮の新年度｜リアクション

星ヶ丘寮の新年度

☆自室でのんびり

「ありがとう」
　お茶を受け取った桜月は、そのメイドがいつもの恋人兼専属メイドでないことを残念に思いながらお礼を言いました。
　寮付きのメイドは、一礼して去っていきました。
　お茶を飲みながら、月は窓を開けて、見える景色を楽しんでいます。
（もう三年になったし卒業後のことも考えないと。一度お祖父様、お祖母様に相談しようかな）
　生まれつき色素が非常に薄く日光に弱い月は、幼少時に外見を両親に気味悪がられ、不憫に感じた祖父母に引き取られていました。
　自分で服のデザインをするようになったのも祖父母の趣味の影響で、月は、服飾デザイナーを目指して勉強中でした。
（恋人のことも話さないと、一緒に里帰りしようか）
　恋人は同性で月の専属メイドですが、祖父母ならきっとわかってくれるだろうと月は考えていました。

　そんなことをぼんやりと考えながらお茶を飲んで、春の花が咲き誇る景色を見ていると。
「うん、インスピレーションが湧いてきた」
　そのままデザインを描き始めました。
（今の感じを途切れさせたくないな、お昼は食堂に頼んでサンドイッチを持ってきてもらおう）
　そう思う月ですが。
（その連絡をする手間すら惜しい……だけど、食べないと集中力切れるし）
　恋人が休みでなければ、気をきかせてきてくれるのですが。
「よし、これでいいかな」
　一つのデザインが完成し、月は食堂ではなく業者に連絡して形にしてもらうことにしました。
（出来上がったら恋人に着てもらって感想を聞こう）
　その姿を想像して、月は思いつきます。
「あっ、折角だからあのシリーズのアクセサリーも着けてもらおう」
　と今度はアクセサリーの業者に連絡を取ります。
「そう、星のシリーズの最新の、イヤリングとネックレス、指輪も持ってきてほしい」

　電話を終えて月は一息つきます。
「集中切れたらお腹がすいた……もうこんな時間か」
（ずっと自室だったし食堂で食べよう）
　時計を見た月は立ち上がり、食堂へ向かいました。
　芸術活動は孤独な作業ですが、月は孤独を恐れていました。

　食堂のメニューから適当なものを頼み、夕食にします。
　メイドが給仕してくれますが、やっぱり恋人の専属メイドじゃないとちょっと勝手が違います。
（泊まり込みでずっと傍にいてくれないかな～）
　そんなことを思う月でした。

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