VS病魔の妖精　桜餅の木を救え！！｜リアクション

VS病魔の妖精　桜餅の木を救え！！

マリエッタは大きな花びらの飛んできた方向へ走っていた。
「あそこ？」
　花びらは林の奥から舞ってきているようだ。
　林を走り抜けて、開けた空間に出る。
「！」
　枝に桜餅を生らせた木が立っていた。
　と、叫び声が聞こえた。
「うわっ」
　見ると、小学生くらいの少年、もとい龍樹が吹っ飛ばされて地面に転がったところだった。枝の叩きつける攻撃を避けたのだろう。
「あなた、大丈夫？」
　マリエッタがそう聞いた途端、桜餅の木が枝を思いっきり振った。勢いよく桜餅が飛んでくる。
「ねえちゃん、危ないっ！　後ろからも」
　後ろへ避けようとしていたマリエッタだったが、とっさに横へ。
「ありがとう。……！　よそ見してちゃダメっ」
　龍樹は、マリエッタの声にはっとする。地面が盛り上がりながら一直線に何かが迫ってくる。モグラのようだが、恐らく木の根だろう。
　龍樹は狙いを定め、盛り上がった地面に桜斧を振り下ろした。ぶった切られた木の根が反動で地面から飛び上がって、舞う。

「はああああっ！」　
マリエッタは次々に飛んでくる桜餅を桜斧でぶったぎり、時には避けながら木の根本まで走る。
　枝の叩きつける攻撃は避けながら斧を回転させると効率良く切り裂ける。
「っ！」
バランスを崩しそうになったところで四方から桜餅が飛んでくる。マリエッタは後ろへ跳んだ。
桜餅攻撃が厄介だ。枝や根なら動きも読みやすいのに。
と、枝が伸びて来た。
「さて、どうするか」
　叩きつける攻撃、しかし、
「え？」
　桜斧を構えたマリエッタは目を見開いた。攻撃してきた枝に桜餅が生っていたのだ。枝で攻撃するふりをして、桜餅を投げてきた。とっさに腕でかばおうとすると、
「させるかー！」
　駆けてきた龍樹が桜餅を打ち落とした。
「ねえちゃん、桜餅は俺が引き受けるからさ、よろしく！」
　マリエッタは頷いた。龍樹が気を引いている隙に走り出した。
枝の攻撃をかいくぐりながら、桜斧を構える。
「これで、なんとかっ」
　幹に近づけたは良いが、上から桜餅が降って来る。
「くっ」
　避けながら桜餅をぶった切った瞬間、足首に根が絡みついてきた。
　動けなくなる前に、
「させないからっ」
　マリエッタは桜斧を投げた。ひゅんひゅんと音を立てながら、斧が幹に突き刺さる。
　その瞬間、病魔が発する黒い靄が木から飛び出してきた。木が沈黙すると同時に、黒い靄が空へと昇り、消えて行った。

　座り込んだ龍樹とマリエッタは、しばらく呆然とした後、お互い顔を見合わせる。
「やった……？」
「やったっぽい？」
　と、きらきらと桜色の光が。

『ありがとうございました』

　桜の妖精の声だった。

その後、二人は桜餅を好きなだけ持ち帰ることにした。
「ねえちゃん、ちょっと味見しない？」
「ええ、いいわね」
　帰り際、二人で桜餅を食べた。
「あー、帰ったらかあちゃんと腹いっぱい食べよっ」
「後は緑茶と一緒に」
　そして、一瞬だけの戦友とそこで別れた。

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