寝子島で深海気分を｜リアクション

寝子島で深海気分を

●深海生物を見に

「メンダコちゃんに会えるだなんて夢みたい！　楽しみだわ！」
　シーサイド駅に着いた多喜美律は、今日はメンダコちゃんを堪能するわよ！　と大張り切り。
　深海生物展示コーナーがオープンすることを知った日から、かわいさにメロメロなメンダコに会えるのが待ち遠しかった。
　デートのようなドキドキ気分で、美律は寝子島マリンパラダイスに向かう。

　今年の春に寝子高を卒業した三宅葉月は、秋に留学するので日本を離れる。
　卒業したからといって、時間が有り余っているわけではない。
　世界でも屈指の最難関のフランスの国立美術学校、エコール・デ・ボニャールの試験や準備などで、遅くとも夏には日本を離れることになる。
　留学準備に追われて忙しい折、ふと時間ができた。
　特に何もせずに過ごすのも悪くはないが、何となく手持無沙汰だ。
　どう過ごそうかといろいろ考えた。結局、スケッチブックと七十二色の色鉛筆を携えて気が向くままに歩いてみようと外へ。
　歩き回っているうちに、寝子島マリンパラダイスに辿り着いた。
　ここで時間を潰すのも良さそうということで、チケットを購入。
「深海生物展示……どんなものなのかしら」
　チケットと一緒にもらった案内図を見て興味を示した葉月は、そこを見に行くことにした。

　寝子島マリンパラダイスに入館するなりチケット売り場に向かった美律は、購入し終えた葉月とぶつかった。
「ご、ごめんなさい！」
「大丈夫よ。あなたも深海生物展示を見に来たの？」
「メンダコちゃんを見にきたのよ。ここに展示されているって聞いたから」
　早く見たいわ！　とワクワクする美律。
「そうなのね」
　それじゃあ、私はこれで、と葉月は入館していった。
　チケットを購入するなり案内図を見て、美律はメンダコがいるカワイイ深海生物コーナーの位置を確認。
「メンダコちゃんがいるカワイイ深海生物コーナーはここ、と」

　深海生物展示コーナー一帯は、入り口付近は深海200メートルと同じくらいの暗さだ。
　奥に進むにつれ徐々に暗くなるので、実際に深海にいるような雰囲気に。
　暗い中でも展示生物が見られるよう、水槽周辺はうっすらとした照明で照らされている。
　時折、人感センサーでスポットライトが当たるという楽しい仕掛けが発動する。
「ライトで照らす仕掛けがあるのね。面白い！」
　展示コーナーに入るなりスポットライトが当たったので、美律は鑑賞が楽しくなりそうと期待する。

　入口付近はクリオネ、ナマコといった深海生物が展示されているカワイイ深海生物コーナー。
　潜水艦の窓のような水槽に入れられているので、潜水艦に乗って見ているような気分が味わえる。
「潜水艦の深海探索みたい！」
　ワクワクしながら、美律は順番に鑑賞。

　来たからには全部見て回ろうと思った葉月は、時間をかけて各コーナーを見て回ることにした。
「流氷の天使と呼ばれているだけあって、かわいいわね」
　全体的に透明で大きな頭。円錐形のボディ。羽をゆったりと羽ばたかせてスイスイ泳ぐ様子は神秘的。
　捕食時は頭が大きくパッカリと割れ、6本もの触手が飛び出すという怖い一面も。
　そんなクリオネを、お客さん達は「かわいい」と見ている。
　クリオネの後はヒメカンテンナマコ、メンダコといった深海生物を一通り見て回る。
　カワイイ深海生物コーナーを見終えると、次はキモイ深海生物コーナーに。
「ブロブは、ぶよぶよした小さな塊という意味なのね」
　見た目は醜いけど大きなオタマジャクシみたい、とブロブフィッシュを見る。
　ホウライエソといった変わった外見、見た目が怖い深海生物達を見て、こういう深海魚もいるのねと知った。

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