春はプレゼントを｜リアクション

春はプレゼントを

◆時計のパーツを……

　４月から中学生になった佐藤瀬莉は、星が丘の自室でプレゼントを探していました。
「あった！」
　去年の夏休みの自由工作で作ったものだけれど、我ながらよくできていると思う自慢の一品です。
　それは、時計の余った歯車や針などを組み合わせて作ったペンダントトップでした。
　丸い金色の歯車をベースに、金と銀の針を組み合わせ、ペンダントにつけられるように金具をつけてあります。
　スチームパンクっぽい、とクラスの友達が言っていました。
　
　手先がとても器用な瀬莉の将来の夢は時計職人。
　普段から時計を分解しては組み立てたりしています。
　単なる憧れではなく、目標はスイスにある時計学校への留学で、そのために理数系の勉強はもちろん、専門の文献を読むために英語や、時計学校で使われるフランス語の勉強もしている力の入れようです。
「プレゼントは２０００円以内と言うことだけど、この時計のパーツは分解練習用に壊れた懐中時計のものを使っているので、多分大丈夫かなあ」
　錆落としを丁寧にやって、キラキラ光るようにしたので高価そうに見えました。
　かなり古い代物でしかも修復不可能な時計のパーツなので、実費としては予算オーバーすることはないでしょう。
　けれど世界に一つだけの独創的なアクセサリーは、考えようによっては２０００円以上の価値があるかもしれません。

「後は適当な箱に入れてラッピングすればできあがり」
　おしゃれな瀬莉は、ラッピングにもこだわります。
　包装紙は大人っぽいデザインを意識して選びました。
「どんな人に当たるかなあ。大切にしてくれるといいなあ」
　瀬莉は素敵なお嬢さんや紳士が、自分のアクセサリーを身に着けているところを想像するのでした。
「町でばったり、つけてる人と出会ったりして。感想、聞いてみたいなあ」
　普段の組み立ての練習と違って、使ってくれる人のことをイメージしてみるのは新鮮でわくわくする体験でした。

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