【おまかせ】キャラ的おぎゃー！な瞬間　さーど！｜リアクション

【おまかせ】キャラ的おぎゃー！な瞬間　さーど！

　寝子高１年の鳴海透璃（なるみとうり）は、演出家の父と女優の母の間に生まれた。
　しかし透璃が幼いときに母は家を出て行ってしまい、仕事の鬼である父は透璃を保育園代わりに児童劇団に入れた。

　父よりも面倒を見てくれる母の弟を慕いながら、透璃はめきめきと俳優としての頭角を現していった。
　ショートカットで中性的な美しさを持ち合わせた透璃は、求められるまま少年役も少女役もこなした。
　結果、劇団の男子と女子双方の親からライバルとして睨まれることになり、親しい友達など作ることはできなかった。
　けれど透璃の魂を込めた演技と、思わず聞きほれてしまう音域の広い美しい声は皆を魅了した。
　ファンは順調に増えていったが、透璃は現状に満足できなかった。
　
　お嬢様学校と呼ばれる私立中学に通っていた透璃は父に訴えた。
「家を離れて共学の高校で、寮暮らしがしたい。役者として、普通の学生経験が役作りに生かせると思うんだ」
　父は一瞬の沈黙の後、OKを出した。
　神奈川の自宅を出た透璃は寝子高に入学し、星ヶ丘寮の住人となった。
　普通の学生生活を経験するなら桜花寮だろうが、お金は十分にあり、どうせなら両方の寮を体験したいと考えたのである。
「今までより劇団に通うのは大変になるけど、普通の部活も経験してみたいしね」
　しかし入学早々、透璃は普通でない能力を授かることとなった。
　
　ろっこん『屈折透過』が初めて発動したのは、透璃が入学したばかりで知り合いもおらず憂鬱になっていた時だった。
　前日猫が頭の中へ語り掛けてくる現象を体験した後、あれは夢だったのかと半信半疑でいた。
　頭の中に自分が透明になっていくイメージが浮かび、広がっていく。
　身体を見ると、驚いたことに実際透明になっていた。
　その現象は透璃が感情に囚われているときに何度か起こったが、消えたくないときは抑え込むこともできて、騒ぎにはならずに済んだ。
　だから、その力は放課後や休日の自由時間に解放している。

　街を歩くと人の視線が気になる。
　今までは車で移動していたからこんなことはなかった。
　このろっこんに目覚めた今は、人目を避けて透明になることができる。
　自由で、けれどどこか寂しくて。
　そんな時、透璃は苦しむ猫と、猫を本気で心配する少女を見かけたのだ。
　いつの間にかストレスは薄れていた。
　透明化が解除されていくのを感じて、透璃は声をかけることにした。
「お困りのようだね？」
「えっ？」
　金髪の少女……斐美はびっくりした顔で透璃を見たが、切羽詰まった様子でしゃべりだした。
「そうなんや。聞いてくれる？」
　
　

このページにイラストを設定する