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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
猫又川花筏下り
桜の精が櫂をくっと操ると、花びらの動きが速くなった。
くるくる、くるくる回転し、渦巻く流れに巻き込まれていく。
遊園地のコーヒーカップとジェットコースターを合体させて超高速にしたアトラクションみたいだ！
「きゃああああーーーさいっこうーーーー！」
豪快なスリルに、ののこが楽しそうな悲鳴を上げる。
「ねっ猫又川下りスリル満点だよね。と、とりあえず放り出されないようにしっかりと花筏にしがみついていようね」
英二は舌を噛みそうになりながら叫ぶが、悲鳴を上げ続けるののこに聞こえたかどうか。
（船頭さんの操船を信じて……と言うか信じる以外無いんだけど）
野々さんのように夢だと思えたら景色を楽しむ余裕もあるんだけどな、なんて思ったのも束の間、また船が大きく回転して揺さぶられる。
「きゃあっ！」
夢乃も悲鳴を上げて、桜の精にしがみついている。
「大丈夫ですよ。落ち着いてくださいな」
「そ、そう思うんですけどっ、ひっくり返りそうって思うと、怖くって……きゃああ！」
桜の精はそんな夢乃にくすくす笑いかけて、桜の花筏が回転しすぎないよう急流に櫂を挿して上手に流れを渡ってゆく。同じように人を乗せた近くの花筏からも、わあわあ悲鳴が上がっている。そんななか、一人の金髪眼鏡の青年――笹川 帆太――がなにやらスマホで撮影しているのを見て、夢乃はその度胸に感心した。
急流の箇所を抜け、流れはふたたび安定した。花筏が流れに揉まれていた時間はとても長く感じられたけれど、ほんの数分のことだったようだ。夢乃がふうっと胸を撫でおろしたのも束の間、今度は水面が不穏に跳ねた。
赤と白の輝く鱗が花筏の下をゆらゆらと潜り抜けてゆく。
「まあ。花見鯉ですわ」
桜の精はよくあることとばかりに平然としているが、花見鯉は気性が穏やかとは言い難いようで、何度も花筏に体当たりを仕掛けてくる。その度に桜の花筏が大きく傾くものだから、乗っている葉月たちにしてみれば、いつひっくり返るかと気が気でない。
「追い払いましょう」
葉月は手近に流れていた細い枝を拾い上げると水面に差し込んで花見鯉をけん制する。
ののこや英二も真似して枝で鯉に向かってばしゃばしゃ。
「めっ！ こっち来ちゃダメ！！」
「ひっくり返すつもりなら、こっちだって容赦しないよ」
すると花見鯉は突然ばしゃりっと尾で水を大きく跳ねかして、花筏を飛び越えるような大ジャンプ！
盛大な水しぶきを上げて水中に潜った花見鯉から一拍遅れて水滴がいくつも花筏目掛けて落ちてきた。
桜の精の操船で転覆は免れたものの、葉月たちは全身ずぶ濡れだ。
葉月は深く息を吐いて、筏の上に仰向けになる。
「……どうやら花見鯉は去って行ったみたいね。少し疲れたわ」
目を瞑った葉月はそのまま眠ってしまったようだ。
濡れた衣服が張り付いて体のラインが露わになっていて色っぽく、英二は思わず目を逸らしたが、反対側にいたののこも同じ状況で困ってしまう。
「びしょびしょになってしましたね」
夢乃も胸元を手で覆って慌てている。
「このままじゃ見苦しいし、風邪をひいてしまいそうです。夢なら大丈夫なんでしょうか」
「ど、どうなんだろう？」
英二はどこを見ていいか分からず、赤くなって俯いてしまった。
何か拭くものでもあればいいのだが、手近には何もない。幸い陽光うららかなので、自然乾燥に任せるしかないか？ 身体が小さくなっているから乾くのも早いかもしれない。
「そうだ、歌を歌えば体が温まるかも？」
夢乃は思い切って、元気になりそうな春の歌を歌いだした。
「は～るの、うららの～、ねこまたがわ～～♪」
「うらら～、ねこまた～♪」
ののこがそれに合わせて適当に歌う。
適当でいいのだ。楽しければ。
夢乃は笑顔になっていく。
ののこも満面の笑みだ。
その笑顔を見ていると、英二も口元が綻んでいく。
「今回の猫又川花筏下り、なかなか良かったなぁ」
――野々さんが笑っているから、なんて、我ながら現金だけどね。
見上げれば、はらはら、はらはら。
桜の精の繰る桜の花筏はもうしばしゆるゆると川面をゆく。
くるくる、くるくる回転し、渦巻く流れに巻き込まれていく。
遊園地のコーヒーカップとジェットコースターを合体させて超高速にしたアトラクションみたいだ！
「きゃああああーーーさいっこうーーーー！」
豪快なスリルに、ののこが楽しそうな悲鳴を上げる。
「ねっ猫又川下りスリル満点だよね。と、とりあえず放り出されないようにしっかりと花筏にしがみついていようね」
英二は舌を噛みそうになりながら叫ぶが、悲鳴を上げ続けるののこに聞こえたかどうか。
（船頭さんの操船を信じて……と言うか信じる以外無いんだけど）
野々さんのように夢だと思えたら景色を楽しむ余裕もあるんだけどな、なんて思ったのも束の間、また船が大きく回転して揺さぶられる。
「きゃあっ！」
夢乃も悲鳴を上げて、桜の精にしがみついている。
「大丈夫ですよ。落ち着いてくださいな」
「そ、そう思うんですけどっ、ひっくり返りそうって思うと、怖くって……きゃああ！」
桜の精はそんな夢乃にくすくす笑いかけて、桜の花筏が回転しすぎないよう急流に櫂を挿して上手に流れを渡ってゆく。同じように人を乗せた近くの花筏からも、わあわあ悲鳴が上がっている。そんななか、一人の金髪眼鏡の青年――笹川 帆太――がなにやらスマホで撮影しているのを見て、夢乃はその度胸に感心した。
急流の箇所を抜け、流れはふたたび安定した。花筏が流れに揉まれていた時間はとても長く感じられたけれど、ほんの数分のことだったようだ。夢乃がふうっと胸を撫でおろしたのも束の間、今度は水面が不穏に跳ねた。
赤と白の輝く鱗が花筏の下をゆらゆらと潜り抜けてゆく。
「まあ。花見鯉ですわ」
桜の精はよくあることとばかりに平然としているが、花見鯉は気性が穏やかとは言い難いようで、何度も花筏に体当たりを仕掛けてくる。その度に桜の花筏が大きく傾くものだから、乗っている葉月たちにしてみれば、いつひっくり返るかと気が気でない。
「追い払いましょう」
葉月は手近に流れていた細い枝を拾い上げると水面に差し込んで花見鯉をけん制する。
ののこや英二も真似して枝で鯉に向かってばしゃばしゃ。
「めっ！ こっち来ちゃダメ！！」
「ひっくり返すつもりなら、こっちだって容赦しないよ」
すると花見鯉は突然ばしゃりっと尾で水を大きく跳ねかして、花筏を飛び越えるような大ジャンプ！
盛大な水しぶきを上げて水中に潜った花見鯉から一拍遅れて水滴がいくつも花筏目掛けて落ちてきた。
桜の精の操船で転覆は免れたものの、葉月たちは全身ずぶ濡れだ。
葉月は深く息を吐いて、筏の上に仰向けになる。
「……どうやら花見鯉は去って行ったみたいね。少し疲れたわ」
目を瞑った葉月はそのまま眠ってしまったようだ。
濡れた衣服が張り付いて体のラインが露わになっていて色っぽく、英二は思わず目を逸らしたが、反対側にいたののこも同じ状況で困ってしまう。
「びしょびしょになってしましたね」
夢乃も胸元を手で覆って慌てている。
「このままじゃ見苦しいし、風邪をひいてしまいそうです。夢なら大丈夫なんでしょうか」
「ど、どうなんだろう？」
英二はどこを見ていいか分からず、赤くなって俯いてしまった。
何か拭くものでもあればいいのだが、手近には何もない。幸い陽光うららかなので、自然乾燥に任せるしかないか？ 身体が小さくなっているから乾くのも早いかもしれない。
「そうだ、歌を歌えば体が温まるかも？」
夢乃は思い切って、元気になりそうな春の歌を歌いだした。
「は～るの、うららの～、ねこまたがわ～～♪」
「うらら～、ねこまた～♪」
ののこがそれに合わせて適当に歌う。
適当でいいのだ。楽しければ。
夢乃は笑顔になっていく。
ののこも満面の笑みだ。
その笑顔を見ていると、英二も口元が綻んでいく。
「今回の猫又川花筏下り、なかなか良かったなぁ」
――野々さんが笑っているから、なんて、我ながら現金だけどね。
見上げれば、はらはら、はらはら。
桜の精の繰る桜の花筏はもうしばしゆるゆると川面をゆく。
あとがき
担当マスター：
山中にいな
ファンレターはマスターページから！
参加してくださった皆様、ありがとうございました。
遅くなりまして申し訳ありませんでした。山中にいなです。
みなさんがお住まいの地域はもう桜が散ってしまったでしょうか。
それともこれからでしょうか。
猫又川花筏下り、川面を流れる桜の花びらの写真を見ながら
小さくなったらどんな感じかなと想像を膨らませて書かせていただきました。
ちょうど５人になったということもあり、
ひとつの花筏で御同乗とさせていただいております。
お楽しみいただけましたら幸いです。
それではまた次のシナリオでお会いできることを、楽しみにしています！
遅くなりまして申し訳ありませんでした。山中にいなです。
みなさんがお住まいの地域はもう桜が散ってしまったでしょうか。
それともこれからでしょうか。
猫又川花筏下り、川面を流れる桜の花びらの写真を見ながら
小さくなったらどんな感じかなと想像を膨らませて書かせていただきました。
ちょうど５人になったということもあり、
ひとつの花筏で御同乗とさせていただいております。
お楽しみいただけましたら幸いです。
それではまた次のシナリオでお会いできることを、楽しみにしています！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2021年02月12日
- 参加申し込みの期限
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- 2021年02月19日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2021年02月19日 11時00分
