ＮＹＡＯＫＩで新しい時にむけて｜リアクション

ＮＹＡＯＫＩで新しい時にむけて

●大人への第一歩

　森篠琳子は、寝子島信用金庫の就職が内定していた。
　成績優秀で責任感も強く人当たりの良いが、時折うっかり顔を覗かせてしまう神経質なところもあるがなんとかなるだろう。
　自分が就職することで母と妹が真っすぐに暮らしていければ、何の問題もない。
「あと1ヶ月もしないうちに、私は社会人になるのね」
　通勤用のカバンや手帳、腕時計、名刺入れ、財布、ハンカチ、ストッキング、化粧品といったこまごまとした必要なものは、バイト代で色々と買い揃えた。

　今日は入社式に着るスーツを買いにＮＹＡＯＫＩにやって来た。
「どんなものがいいか、よくわからない……」
　いろいろあるので、どんなものがいいか少し迷う。
　窓口担当であれば制服があるだろうが、それ以外の、例えば外回りの営業職ならスーツは必要だ。
　そうでなくても着る機会は多いだろうから、それなりに落ち着いたものがよさそうな気がするけれど。
　良さげなスーツをいろいろ見るが、これは、というのが見つからない。というか、思い浮かべない。
　理由はわかっている。
　もうすぐ社会に出るのに、自分が社会人になる実感がまだわいてこないからだ。
　琳子は母子家庭で、生活は困窮していた。
　高校１年の時に亡くなった父が残した残した生命保険金と遺産は、お人好しの父が知人の借金の保証人になっていたばかりに跡形なく消えた。
　保険外交員として働く母は体が丈夫なほうではないので、この先、どうなるかわからない。
　琳子はどうにか耐えられるが、9歳の妹がこの状況に耐えられるかどうか心配だった。
　経済的に逼迫してきたことので、バイトに勤しみ、家族が食いつなげるよう必死に頑張った。
　社会人になれば、子供から大人になる。
　それを考えると、少し気分が重くなる琳子だった。

　スーツをお探しですか？　と女性の店員に話しかけられ少しあたふたした。
「今度、社会人になるのでスーツを買いに来たんですけど、どんなものがいいかわからなくて迷って……」
　それなら、こんなのはどうでしょうか、と女性店員はいろいろなスーツを勧めた。
　勧められたのは、黒とネイビー、濃いグレーの3色。
　パンツとスカート、どちらがいいですかと尋ねられたが、入社式ではどちらがいいのかがわからない。
　入社式の女性の服装はスカート、パンツどちらでもいいが、爽やかなイメージなのはスカートだ。
　頼りになるしっかりしたイメージで、というならパンツスーツで。
「パンツとスカート、試着してもいいですか？」
　どうぞ、と女性店員はパンツとスカートを手渡す。
　試着室に入り、まずはジャケットとスカートを試着する。
「何となく似合ってる……かな？」
　鏡を見て、スーツを着た自分をじっくりと見てそう思った。
　パンツはどうかな？　と試着してみたが、これも何となく似合っているという感じだった。
　どっちにしようと迷ったが、パンツとスカートを1着ずつ購入することにした。
　
　入社式で着るのであれば、シンプルで清潔感もあるタイトスカートのスーツはどうでしょう？　と女性店員がアドバイスしてくれた。
　どれにしようか悩んだが、シルエットと着心地を重視したリクルートスーツに決めた。
　通勤スタイルとしても使える万能スーツなので、着回しができるという点も決め手だった。
　スーツが決まれば、あとはどの色にするかを決めるだけ。
　リクルートスーツの定番は黒だが、濃いグレーのスーツやネイビーのスーツも入社式では活躍する。
　営業になるかもしれないと考えると、ネイビーがいいかもしれない。
　ネイビーでも大丈夫かと聞くと、それでも大丈夫ですよと女性店員が答えた。
「じゃあ、このスーツを2着ください」
　スーツが決まったので、次はシャツを。
　シンプルな白のカットソーは入社式にピッタリ。スーツを着て仕事をするのであれば今後も重宝する。
　そう教えてもらったので、これに決めた。
　小物類は、入社式に着るスーツに合ったベルトを購入した。

　スーツを買い終えたので、次は靴を買いに行った。
　選んだのはスムース素材のローヒールのシンプルな黒いパンプス。靴のお手入れグッズも忘れずに買った。
「これを履いて歩くのはきつそうね。入社式までに慣れておくようにしておかないと……」
　これは大人になるための試練なのね、と琳子はため息をついた。

このページにイラストを設定する

ＮＹＡＯＫＩで新しい時にむけて

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧