ののこがぷんすか怒ったら｜リアクション

ののこがぷんすか怒ったら

　寝子高２年の春山小枝は、教室で化学の授業を受けていた。
（むむむむむ、眠いよぉ～）
　小枝はじっとしているとすぐに眠ってしまう。
　座っているときは勿論立っていても直立したまま寝る。
　別に寝不足な訳でもなく、夜はちゃんと寝ているのに昼も寝る。
（五十嵐先生の声、なんか、眠くなっちゃうんだよねぇ～）
　これに関しては小枝だけの責任とばかりは言えない。
　抑揚なくのんびりしたペースで話し、声を荒げたりしない五十嵐尚輝先生の授業では、寝てしまう生徒も珍しくないのだ。
（でもちゃんと授業聞かなきゃだしぃ……うーん）
　眠気に抗い伸びをした小枝の視界に、天井に張り付いているクモが入った。
（むー、あのクモにろっこんで憑依できたら、寝ながら授業聞けるかなぁ……？）
　小枝のろっこん『ちいさきもののゆめ』は、睡眠により小枝の意識がなくなると発動し、周囲のランダムな小動物に意識が乗り移るというものだ。
　意識がなくなるのが前提だから、発動中のことはよく覚えていなかったし、外の小鳥とかに憑依してしまうと授業は聞こえなくなってしまった。
（うー。そんなふうになったら……いいの……に……な……）
　そう思いながら、すやぁ、と小枝は睡魔に負け机に伏した。

　気が付くと、高いところから教室を見下ろしていた。
（あれ……これ、さっきのクモの体？）
「チチチ……」
　不意に聞こえた小鳥の声に目をやると。
　五十嵐先生のボサボサ頭の中から小鳥が出てきて、鳴いているではないか。
（えっ？　何あれ……かわいい）
　先生自身は小鳥の存在に気づいていないようだ。
　せっかく狙った生き物に憑依できたのに、今度は小鳥が気になって授業どころではなくなってしまった。

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