闘え！　天下一六魂祭｜リアクション

闘え！　天下一六魂祭

◆猛る秋風、満ちる潮

「カカッ！　バトル大会とは面白いじゃないさね」

　この状況で誰よりも殺る気だったのは矢萩秋ッ！！！　彼女は呵々と笑い標的を探す……その瞬間ッ！！！　どこからか鋭い拳が飛んできたッ！！　秋は鍛え上げた反射神経とその肉体による俊敏な動きでそれを避けるッ！！！！

「ハッ！　のっけからやってくれるんじゃないか！　吉住！」

　着地した秋は相手に近付きキックをお見舞いするが、相手も負けていないッ！！！！　相手はその蹴りをしなやかに受け流すッ！！！

「一切の遠慮なく相見え全身で愛交える戦いをっ。力と技で、惨たらしく愛し合いましょう、御姉様……！」

　愛すと書いて『つぶす』と読むッ！！！　吉住志桜里が恍惚の表情で秋に迫るッ！！　志桜里はろっこんを使用し、元の十倍ほどのサイズに巨大化ッ！！　なんと雄大な姿ッ！！！　戦神をも上回る巨体ッ！！

「いいさね、そちらがその気ならこちらもそれに相応しく対応させてもらうよ！」

　突進する志桜里ッ！！　彼女は防戦一方の秋に拳を叩き込むッ！　それも一回ではない。何回も！　何回もだ！！　怒涛のラッシュ！！！

「やるじゃねぇか……」
「ああっ、御姉様！　この程度で潰えるなんて御姉様らしくありませんわ！！　この攻撃、耐えてくださいまし！！」

　そしてこの巨女は天高く飛び上がるッ！！！！　どこまでいくつもりかッ！！　そして秋の上に彼女の身体が迫るッ！！　圧巻のボディプレス！！！　その威力まるで隕石ッ！！

「まずいっ」

　窮地の秋ッ！！！　寸でのところで避けるッ！！！　響く地響きは会場を揺らすッ！！！　巻き添えとなった参加者は五十を超えたッ！！　なんと強靭な肉体ッ！！
　志桜里は次の攻撃に備え立ち上がるッ！！　しかしここで時間切れッ！！！　形勢逆転ッ！！　ろっこんの反動で小さくなった志桜里はいまや一寸！！　だが彼女は不敵な笑みッ！！！

「足運びすら必殺の好機、活かせないなんてクソザコムーヴは御姉様らしくありませんわ！　愛してみせて下さいまし！」
「……舐めるんじゃねぇよ、糞餓鬼が！　『鬼矢萩』の実力、身を持って体感しな！」

　彼女の煽りに秋は闘争本能を刺激されるッ！！！　ろっこんによって木刀に日本刀の如き切れ味が宿るッ！！！　秋は切っ先を地に向けすり足で近付くッ！！　本来防御の構えと言われる型であるが一寸となった志桜里には最適の構えッ！！　無論武器となるのは刀だけに非ず、秋はその身体全体で志桜里を潰す気だッ！　否ッ！　『愛す』気だッ！！

「オラオラオラオラッ！」

　歩みのままに踏み潰す緋眼の鬼姫a.k.a.秋ッ！！！！　躱した所へ予備動作無しで襲う一挙手一投足は全て必殺級ッ！！！　しかし志桜里は飄々と避け逃げ跳ね回るッ！！！

「というか私の殺意で気持ちよくなってんじゃねェぞ！　そんな事叫ばれたら…こっちだって殺る気になっちまうじゃねぇか！」

　にぃっと笑う秋ッ！！！　鳴る地響きッ！！　彼女は木刀の柄を握り締めるッ！！

「さぁて、お互い次で決めようじゃねェか？」

　巻き上がる風。秋は足に力を籠め、じり……と捩じる。

「泣くも笑うもこれで最後……精々気持ちよく果てようや！」

　志桜里の幸運もここで尽きるッ！！　秋は人間の可動域を超え、突進するッ！！

「疑似再現――刀崎神滅流奥義が一『神風』」

　そして斬撃によってソニックブームが起こるッ！！！　自身も無事では済まない大技ッ！！　避けられない志桜里ッ！！
　彼女は歯牙に、紫電閃く白刃に、切先に、脚に、蹄が如き靴に、おろし金が如き靴裏と石畳に、その小さな身を押しつぶされる。ぎりぎりとかかる圧力に骨が砕ける。手足が捥げる。内臓は傷つき、血はごぼごぼと喉を逆流する。心技体差の生み出す暴虐の限りを味わいつくした志桜里はその快感に身を震わせた。

「御姉様の殺意で全身浴、これはもう優勝ですわァァァァ！！」
「カカッ！　……またやろうじゃねェか」

　殺意と書いて愛ッ！！！！！！　元のサイズに戻った志桜里は地に伏したまま痙攣ッ！！！　吹きすさぶ風で秋の髪が靡くッ！！　参加者残り、二――最後の戦いが今、始まるッ！！

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