【寝子祭2nd】教室商店街『侭猫通り』｜リアクション

【寝子祭2nd】教室商店街『侭猫通り』

　寝子祭の当日。
　みつえは早朝に学校に来て、借りた家庭科室で飴作りに精を出していた。クッキー店の女生徒も一緒だ。
　フルーツは水洗いして水分を切る。食感の違いを考えて、いちごとりんごは生のもの、みかんとパインはドライフルーツを使うことにした。
　水とグラニュー糖を混ぜて溶かし、串に刺したフルーツをからめて、乾かせば完成だ。
「わぁ～、きれい。まるで宝石みたいよ、猫座さん」
「ありがとうですなー。そちらもとてもいい匂いです」
「ふふ、分かる？」
　彼女がオーブンから取り出した天板には、雪だるまやうさぎの絵が描かれたクッキーが整然と並んでいる。
「この白い絵の具はなんですな？」
「アイシングっていうの。絵の具じゃなくて、食べられるよ」
　その後二人は、出来上がったキャンディとクッキーをラッピングする作業に追われた。
　一段落したみつえが時計を見ると――もう時間がない。二人は慌てて完成品を抱えて教室商店街へと急ぎ、開店の体勢を整える。
「間に合って良かったですなー」
　商店街の面々も手伝ってくれて、何とか開始５分前に準備は完了。
「では、皆さん。ついに寝子祭当日を迎えましたね」
　稀跡の号令で円陣を組み、皆で手を重ね合わせる。
「教室商店街、侭猫通り開店です！」
「おー！」

◆

「おっとぉー！　ラズちゃん渾身のキックを避けられてしまったぁー！　隙だらけの所に追撃だッ！」
　開店早々盛り上がっているのは、瑠樹のドールハウス――で受け付けているカプギアバトルだ。
「ラズちゃん避けて！　そのまま体を移動するんだよぉ！」
　瑠樹が操るスマホに応え、ラズちゃんは足を振り抜き、くるりと闘牛士のように相手の攻撃を避けた。
「ラズちゃんギリギリで回避ーッ！　ワンピースが可憐に翻るーッ！　今度は相手が体勢を崩したかッ！？」
　フルーツキャンディやクッキー片手に、おぉ、と観客がわく。
「今だ！　にくきゅうわっかビームっ！」
　ラズちゃんが突き出したＲアームから、ピンク色の丸いビームが放たれ、相手のカプギアに直撃。
「ここで勝負は決まったーッ！　勝者、ギアマスターりゅーき＆ラズちゃん！　観客の皆様、激戦を繰り広げた両マスターに拍手をお願いしますッ！　実況は鉄道模型展示の相原でした！」
　わき起こる拍手の中で、瑠樹は対戦相手と握手を交わす。
　観客が散らばった辺りで、実況をしてくれた生徒にお礼を言って、ドールハウスに『休憩中』の札を立てた。
「ジュース持ってたお客さんもいたなぁ、美味しそうだったなぁ」
　少し喉が渇いたので、『みつえとノエルのお店』で飲み物を買おうと思ったのだ。
「いらっしゃいませですな！　何をお求めですか？」
「えっと……リンゴジュースを下さいな」
「はいですな！」
　ジューサーでりんごが飲み物へと変わるのを眺めつつ、瑠樹はキレキレのダンスを踊るノエルに目を細めた。
「すてきなダンスだねぇ。きれいな飴もお客さんに大人気だし、すごいよぉ」
「えへへ～、それ程でも……ありますかな！　曖浜さんのドールハウスも、ほわっと暖かい感じですな」
「うん！　お兄さんとお姉さんに手伝ってもらって、二階建ての豪華なおうちにしたんだよぉ」
　一階は焦げ茶色のフローリングと大きな窓、ソファにレンガの暖炉でシンプルにまとめ。二階の寝室はラピちゃんのペンダントに合わせた青い壁紙とレースのカーテン。ベッドはちゃんとぬいぐるみが寝られるように、ハンカチのお布団つきである。
「お買い上げ、ありがとうですなー」
　代金を払ってジュースを受け取り、瑠樹は店を後にした。

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