【寝子祭2nd】教室商店街『侭猫通り』｜リアクション

【寝子祭2nd】教室商店街『侭猫通り』

『寝子島玉石展覧所』――という文字を段ボールに書いて切り抜き、色画用紙とマスキングテープで飾り付けて、看板は完成だ。
　嘉渡洲稀跡はふぅ、と息をついた。
　寝子祭に備えて準備の真っ最中の昼休み。イベント主催者として期待と不安混じりで祭前日を迎えた稀跡であったが、幸いにして７人もの出店希望者が集まってくれた。
　顔ぶれも、ぬいぐるみハウスやフルーツキャンディ、鉄道模型にアロマキャンドル、クッキーに手作りアクセサリーと多彩だ。
　商店街をイメージした教室内の飾り付けと、黒板アートは出来上がったので、あとは各々の店の準備をするだけだ。
「嘉渡州さーん、私たち材料の買い出しに行ってくるね」
「八百屋さんとスーパーを回るですな！」
「はい、行ってらっしゃい」
　クッキーを作る生徒と、キャンディの店を出すミーツェ・Ｍ・フェリス――またの名を猫座みつえが教室を出て行くのを見送る。
「曖浜君、良かったらドールハウスの床にはこの塗料を使うといい。落ち着いたフローリングの雰囲気が出せる筈だ」
「あら、そんな暗い色！　天真爛漫なラズちゃん達にはもっと明るい色がいいと思うわ。レースやリボンで花を添えないと」
「いや！　ラピちゃんのピュアな愛らしさが際立つのはゴテゴテと飾り立てた部屋より、シンプルさを全面に押し出した部屋だ」
「お、お兄さんお姉さん、落ち着いて欲しいんだよぉ」
「二人とも……曖浜さんが困ってるわよ？」
　鉄道模型展示の生徒と、手作りアクセサリー店の生徒が芸術性の違いで火花を散らしているので仲裁に入る。
　何とかそれぞれが持ち場に戻るようにしてから、稀跡も展覧所に戻った。
　選び抜いた石たちを、最高に美しく展示するために。
　まず、大きさ別に分ける。学術的な鉱物名が分かるものは、作成したラベルを貼ったアクリルのケースへ入れて、鉱物標本風に。
　宝石のような石は、ビロードの布を敷いた格子状の箱に一つずつ。砂浜のシーグラスは、ガラス瓶に砂や貝がらと共に入れて。
　九夜山や三夜湖の石は大きめなので、採取した場所の写真を共に飾り、立体的な展示を心がけた。
「嘉渡州さんのそれ、素敵だねぇ……あたしもキャンドルをおひな様みたいに飾りたいんだけど、どうしたらいいかな」
「大丈夫。アクリルケースも布も、まだ余りがあるから貸し出せるわ」
　アロマキャンドルの店主に声をかけられたので、スペースまで行って一緒に布を敷き、アクリルケースをひな壇のように組み合わせてキャンドルを飾る。
　小さいものを前に、大きいものを後ろに置いて、それぞれ値札も作成して完成だ。
「うわー、お陰ですてきなお店になったよ、ありがとう！」
「どういたしまして」
　他に何か忘れていることは無いだろうか……と廊下に出て、『教室商店街・侭猫通りへようこそ！』というゲートを見直していると、一人の男子生徒が走ってきた。
「出店はまだ間に合いますかーッ！？」
「え、えぇ……空きはありますよ。どのようなお店を？」
　たじろぎつつ稀跡はそう答えた。
「うちのカトリーヌちゃんの写真を展示販売する店ですっ！」
　男子生徒はそう言い、スマホをを稀跡の前に差し出す。長毛種の猫が猫じゃらしを追いかけてジャンプをしている写真だ。
「え、えと……では、手続きをお願いします」
　稀跡は男子生徒を教室商店街に案内し、こうして８つのスペース全てが埋まったのであった。

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