【星幽塔】星幽塔に朝が来た｜リアクション

【星幽塔】星幽塔に朝が来た

「今日も一日がんばリリエルです！」
　大通りにある星の酒場 “Barアストラル”で調理の手伝いをしているリリエル・エーテライトは、早朝の朝市に材料を買い出しに来ていた。
「新鮮な素材をたくさん買い込みますよー」
　ふんす、と鼻息を荒くして金髪のポニーテールを揺らす。
　まずは野菜を買いに向かう。
「今日は野菜がいろいろ入ってますね、珍しい野菜もちらほらとみえます！」
　リリエルは袋に入った小さくて黒い丸いものに目をつける。
「すいません、これはどう料理したらいいんですか？」
「ああ、タピオカの実だね。洗ってドリンクに入れるだけでぷにぷにした食感になるよ。今流行なんだ」　
「ふむふむ……これが噂に聞くタピオカですか。マスターたちもBARアストラルでも出したいと言ってました！」
　さっそくタピオカを買い込んだリリエルは、他の材料を探しにいく。

「フンフフンフフン～♪」
　“Barアストラル”で、給仕のアリス・ミーティアは鼻歌を歌いながら準備していた。
　そこへ店のマスターが顔を出した。
「マスター、コーヒーよろしく！」
　マスターは頷いてコーヒーを淹れてくれる。
　アリスの朝はマスターの淹れたコーヒーから始まる。
「生中も好きだけどこのコーヒーも好き。目が覚めるし落ち着く香りが良いよね」
　香りと味を心ゆくまで楽しみながら、マスターと話をする。
「昨日も遅くまで賑やかだったねー」
「ああ、調子はどうだい？」
「生中飲んでも二日酔いはした事ないから今日も元気っ！　ごちそうさま～」
　コーヒーを飲み終えて片付けると、アリスは店に来ていた依頼の紙を取り上げ、ペタペタ掲示板に貼る。
　そして面白そうな依頼がないかチェックする。
（うーん、暴れられそうな依頼来ないかなー）
　そんなことを思いながらマスターに頼んでおく。
「マスター面白そうな依頼があったらすぐに教えてね！」

　水色のロングヘアをなびかせながら、アリスはテーブルや椅子を拭いて、床をモップ掛けする。
　翼で飛びながら上も掃除していると。
「ただいま帰りました～」
　朝市で仕入れた荷物を抱えたリリエルが帰ってきた。
「おかえり」
「タピオカを仕入れて来ました」
「あっ、こないだ第四階層で飲んで美味しかったんだ♪　市場にも出回るようになったんだね」
　アリスが目を輝かせる。
「マスター、早速作ってみるんでメニューに載せておいてくださいね。それじゃ、料理の仕込みを開始しましょう！」
　身支度をし、リリエルは厨房に入った。

　掃除の続きを始めたアリスが声を上げる。
「あっ、コイン見つけた！　姿絵も落ちてる」
　星幽塔では写真の代わりに魔力を込めた筆で描かれた本物そっくりの絵が流通している。
　その絵に描かれた美人に、アリスはなんだか見覚えがあった。
「マスター、落とし物があったよ」
　マスターに届けると、
「ああ、踊り子さんだったかな……」
　絵は置いておけば落とした人が持っていくだろうけれど、コインは誰のかわからないからもらってもいいと言ってくれた。
「ラッキー♪　掃除も終わりっと」
　
　手を洗い身支度を済ませて、アリスは厨房に入る。
　料理の下ごしらえを始めるが。
（おいしそうな果物……）　
　生唾が湧いてきて。
「あっ、アリスさん、つまみ食いはだめですよー」
　つい、ぽいと一口食べたところをリリエルに見つかってしまった。
「だって美味しそうなんだもん」
　無邪気に答えるアリス。
「おいしそうですよね……でも一つ食べたらまた食べたくなっちゃうじゃないですか」
　リリエルも気持ちはすごくわかる。
「アリス、つまみ食いは一日一つまでな」
　マスターののんびりした声がした。聞いていないようでしっかり聞いている。
「はーい。あっ、お客さん！　いらっしゃいませー！」
　ドアが開いてお客が顔を出し、アリスは笑顔で厨房を出るのだった。

　

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