寝子高制服☆トリエンナーレ！｜リアクション

寝子高制服☆トリエンナーレ！

●制服：エントリーNo.12　緋紅朱赫乃、No.13　シグレ・ナイトウォーカー
　
　舞台袖で、緋紅朱赫乃はシグレ・ナイトウォーカーの裾を掴んでいた。
「ん？」
　恋人のシグレは優しい。
　ほら、今も。緊張で鼓動の高まる赫乃の、薔薇色の前髪をそっと撫でてくれる。
「その、ドキドキ、して……」
　そういって視線を彷徨わせる赫乃に、シグレは笑って手を差し伸べた。
「赫乃、行くぞ？　お前に恥ずかしがるなっていうのも無理な話だが……ほら」
「シグレ、さん……」
　彼はいつものスマートな自信と余裕に満ちた笑みを浮かべていて。
　そんな彼だから、赫乃は安心して手を取ってしまうのだ。

「自信を持て。お前の良さは俺が保証する。顔、上げて見せろって」

　彼の手が連れだしてくれたのは、スポットライトの光の中。
　彼の言葉は魔法のようで、いつだって、赫乃に勇気をくれる。
（シグレさんに、ふさわしい、レディー、だって、見せなきゃ！）
　恥ずかしさでうつむきがちに歩いていた赫乃は、勇気を出して顔をあげ、それから薔薇の花のほころぶような可憐な微笑みを浮かべてシグレを見た。
「よし、それでこそ俺の選んだレディだ」
　シグレが満足そうに笑ってくれるから、会場中から注がれる視線も、もう怖くない。
（だって、わたしの王子様が、傍に、いるんだから）

　北原みゆきは、以前クラスメイトから聞いた女の子の名が聞こえて、ステージを見た。
「あの薔薇の花のような子が赫乃……ちゃん？　綺麗」
　みゆきだけじゃない。会場中が、その儚げな薔薇の微笑みに魅せられていた。

　一方でシグレは、表には出さないがすこし不機嫌だった。
（全く、自慢のレディをお披露目するのは吝かじゃないが、下卑た目に晒すのは面白くないな、本当に……）
　我が儘だと言われようとも、これが微妙な彼氏心というもの。

「着こなしのポイント？　下品にならないように気をつけている。後は常に清潔感を、といったところか」
　そこでシグレは、羽根のように軽い赫乃をお姫様抱きに抱き上げた。
「え、シグレ、さん……っ！」
「ああ、失礼。こうしないとマイクが赫乃の声を拾えないと思ってな」
「あ、ありが、とう……」
　赫乃の胸は、舞台袖にいたときとは違うリズムで高鳴る。
「私、は、ふつうに制服を着てる、けど……薔薇が好き、だから、ヘッドドレスの薔薇がこだわり、かな……」
　そんな赫乃を、シグレは優しい瞳でじっと見つめた。
　赫乃の瞳にももう、シグレしか映らない。
　彼女は彼の首筋に手を伸ばし、引き寄せるように顔を近づける。
「シグレさん……って、欲張り、さん？」
「そうさ。だから、赫乃の一番可愛い顔は他の誰にも見せたくない。……ちょっとだけ、我慢できるよな」
　赫乃の口唇にそっと人差し指を押し当てて。
　シグレは赫乃を抱いたまま足早に舞台袖へと退場する。

　そのあとのことは、観客に見せるものじゃない。
　人目を避けた舞台裏で。
　シグレのとろけるような甘いキスが、くちびるに落ちる。
「私だけ、みてくれて、嬉しい、よ」
　赫乃がそっとキスを返したのも、それと同じ場所だった。