寝子高制服☆トリエンナーレ！｜リアクション

寝子高制服☆トリエンナーレ！

●制服：エントリーNo.03　猫村翡翠、No.04 神薙焔
　
「うっ……金髪の華蓮先輩や、元気な真央のすぐあとか。気が重いな……」
　猫村翡翠は舞台袖で胃のあたりを擦っていた。
「あたしなんかがぁ……うぇええーーー」
「どうしたの、食べ過ぎ？」
　今日一緒に屋台めぐりをした神薙焔が心配そうにその背を擦る。
「そうじゃないんだけど……こっ、困ったぞ、特にどこかにこだわりなんて何にも無いし、着こなしだって平凡……でも、引き当てたんだし出場しないなんて、損だよなぁ。はぁぁ……、みんなは凄いな」
「なんだ、緊張してるの？」
「そりゃあ……あたしの取り柄なんか空元気と空気の読め無さくらいだし」
「いいじゃない、空元気。空元気でも元気は元気！　それでも怖いならさ、一緒に行こうよ」
「えっ……！」

　焔に手を引かれて、翡翠は明るい光の中によろけ出る。
（焔……）
　となりを堂々と歩く彼女は、いつも以上に輝いて見えた。
　それに見とれて歩いていたら、どさっと音を立ててずっこけてしまう。
「だ、大丈夫？」
　差し出された焔の手を取って翡翠は苦笑いをした。
「いっ痛ぁー、やらかした……取り乱しても仕方ないね。逃げないって決めたんだから、堂々としてなきゃ」
「その意気！」
　焔の力強い笑みに勇気を貰って、翡翠と焔は腕を組んでキャットウォークを歩く。

「にゃにゃにゃーん、駄菓子屋ねこやの看板娘、猫村翡翠にゃん！　制服の着こなしポイントは、ベストにチェックのスカートの組み合わせで、袖をまくって半袖にしているとこかな。制服にまつわるエピソードは特には無いですけど……今のあたしで居られるのはこの制服のお陰です」
　そういうと翡翠はペコリと頭を下げ、それから焔を見る。

「あたしは、朝、MTBでかっ飛ばすから、スカートの下はスパッツよ」

　上半身は半袖のシャツに指定のベスト。改造はなし。素材の旨味を引き出すというやつだ。
「襟元はラフに開けて涼しげに、ソックスはスカートのチェックと合わせてちょっと派手めで明るく、ってとこかな。そしてポーチの中身は」
　と焔は肩かけポーチを開けた。
「乙女の秘密の弾薬庫よ、いざというときに頼りになるグッズとか、ちょっとおなかが空いたとき用の非常食、チョコレートとかもね！」
　ポーチの肩紐が胸元を横切って胸の形が強調されてしまっていることに、本人は気づいていない。
「そして、足回りは機動性と制動力に優れた愛用のスニーカー、登校に使うMTBと同じく頼りになる相棒よ、こんなことだってできるわ！」
　焔はその場でターンして、側転からバク転につなげる。スパッツのお蔭で、激しい動きも恥ずかしくない。
　焔と翡翠は、観客からたくさんの拍手を貰ったが、一番大きく拍手をしたのは、焔のアクロバットを一番間近でみていた翡翠かもしれなかった。

●制服：エントリーNo.05 巫部紫苑

　続いて登場したのは、食べ歩き女王・巫部紫苑。
　本日、食べ物系の出店を全制覇する勢いの猛者だ。
　両手に食べ物を山のように抱え、やんわりと笑いながら「ああ、どうもどうもー」と適当に手を振って歩く。
　そして、端まで来るとクルッとスカートを翻すような優雅なターンを決めた。

「着こなしといっても、普通に着てるだけです」
　というわりに、太もものあたりがセクシーダイナマイトな感じだが、紫苑にとってはこれがフツウ。
「最近ちょっと胸が苦しいけど……まあ、気にするほどじゃありませんし……」
　あれだけ食べて、おなかのあたりが苦しくならないのが憎らしい。
　そんな羨望とちょっとした僻みのまじった視線を浴びつつ、紫苑は「ではでは～」と手を振って退場した。
　どうやら、出店巡りの続きへと赴くらしい。