喧嘩のあとで｜リアクション

喧嘩のあとで

▲　智瑜　ＶＳ　桐島　！！

　それは朝から暑い日でした。
　外出中の宮祀智瑜は、日差しを避けて公園までやって来たのでした。
　そこでばったり桐島義弘先生に会ったのです。
「義弘先生、おはようございます！」
「ああ宮祀か、奇遇だな……」
「ここで先生とあえて嬉しいです」
　笑顔になった智瑜でしたが。
　その時、近くをジョギングする女性が通りかかりました。　
「……先生？」
　その女性の揺れる大きな胸に引き込まれるように先生の視線がつうっと動いたのを、智瑜は見てしまったのです。
「先生、あの人のおっぱい見てなかったですか？」
「……何のことだ。そんなもの見ていない」
　けれどそう答える先生の目は泳いでいました。
「確かに見てました。私と話してるのに何で他の人のおっぱいに目が行くんですか？」
「いや、動くものに気を取られたかもしれないが、変な意味はない」　
　普段は優しく控えめな智瑜ですが、見苦しく言い訳する義弘先生に怒りが湧いてきました。
「私のおっぱいじゃダメなんですか？」
　ぐいっと近づく智瑜に、先生はたじろぎます。
「な、何を」
「きちんと見てください！」
「馬鹿なことを……」
　追い詰められた先生はとっさに智瑜の豊かな胸から視線をそらします。
「先生のばか！」
　とうとう智瑜は、拳固で先生の胸をぽかぽか叩き出しました。
「私と居る時に他の人のおっぱい見ちゃダメです！」
　智瑜はなおも先生をぽかぽか叩きます。
「なっ……それは論理が破綻している。俺はそんな意図はなく」
「言い訳は聞きたくないです！」
　ちょっと涙目になって、智瑜は先生の胸をぽかぽか叩きました。
　そこへ、さっきの女性がまた通りかかりました。
　さっきと同じように、上下に揺れる胸。
　いかん、と思った桐島でしたが時遅し。
「あっ！　また見ました？　もうっ！」　
　智瑜は壁のように手を伸ばして、先生に見えないようにガードします。
　義弘先生の全身から汗が噴き出しました。
「いや、今のは」
「チラ見もダメです！」
　またぽかぽかと殴ります。
「そうか。こうすれば見えないぞ」
　そう言った先生は、おもむろに眼鏡をはずしました。
「……」
　普段見れない先生の素顔に、思わず智瑜は見とれてしまいました。
「どうした」
「反則です、先生……いえ、もういいです。眼鏡かけてください」
　ようやく智瑜は我に返りました。

（他の人のおっぱいはともかく、私の姿が見えなくなっては悲しいです。いつもならこんな事じゃ怒らないんですけど）
　そう思いながら、智瑜は頭を下げました。
「義弘先生、ごめんなさい」
　そしてちょっと悲しそうに見つめます。
「嫌いになっちゃいました？」
「な、何を……わかってくれたならもういい」
　眼鏡をかけた義弘先生に。
「私のおっぱいならいつでも見てもらって大丈夫です」
　たゆん、と智瑜の胸が揺れました。
「先生なら触ってもらっても……」
　照れながら頬を染めて言う智瑜に、義弘先生の頬も少し赤くなりました。
「……こう暑いと熱中症になりそうだな。水分を補給しよう。宮祀は何を飲む？」
　そう言って、自動販売機のほうへ歩き出す義弘先生でした。
　

このページにイラストを設定する