【星幽塔】隠し階層　アステリズムに休日を！｜リアクション

【星幽塔】隠し階層　アステリズムに休日を！

●あなたの旅の話を

　月原想花は、他の冒険者と共にテーブルへクロスを引いたり、持ってきたお菓子を点検したり……と準備を終え、アステリズムを迎えた。
「今日は、よろしくお願いしますね」
　やんわりと微笑んだのは、上品な雰囲気を纏ったアストライア・スピリット。それに続くようにローブを纏った美女、フローレンス・アイメルトと柔らかな笑みが印象的なエイロス・レヴィが姿を現す。
　テーブルに着いた所でお茶を注ぎ、一人一人の前に置く。アステリズム達は良い香りのするお茶に、より表情を柔らかくした。
　想花が用意したのは、愛らしいサブレやマカロンなど、「これは……！」と閃いたお菓子である。本当は『猫サブレ』や『寝子島まんじゅう』といった寝子島土産の定番を持っていきたかったのだが……。
（こればかりは仕方ないよね）
　内心で苦笑しつつ様子を見ていると、３人の口にあったようで口々に「おいしい」と行っていた。特にフローレンスが気にったと言っていたような気がする。
　気にってもらえたことに、一先ず安堵する想花の口元にそっと笑みが浮かんだ。

　もてなしの為にやってきた想花たち冒険者も交え、お茶会は穏やかに続く。
　話題は、アストライアが聞きたがっていた『冒険者達の、冒険話』へと移った。
「ぼくはヘタレでビビりだけど、色々冒険していると思う。たとえば、最近は第二階層に行ったよ。水底に遺跡があるって聞いて友達と見に行ったんだ」
　当時の事を思い出すと、少し鼓動が早くなるのは……共に行ったあの子を想うからだろうか？
　想花は「そうそう」とフローレンスを見て再び口を開く。
「第六階層で行われたスタンプラリーにも参加したんだ。つむじ風に乗れる島が、印象に残ったよ」
「！　あのイベントに来てくださったのですね！　ありがとうございます」
　フローレンスの口元が僅かに綻ぶ。彼女もまたイベント運営にかかわっていた為、嬉しかったようだ。
「そういえば、君は『寝子島』の住人だったね。その島の冒険の話も聞いてみたいな」
　エイロスの言葉に、想花は小さく頷く。
「冒険家ねこのヒロシ君と行った空に伸びていく飛び石は、ちょっと怖かったかな……」
　ドキドキした当時の事を話していくうちに、３人は興味深そうに聞いていく。あわや……！　という場面では思わずアストライアとフローレンス思わず、といった様子で目を瞑るのがかわいいな、と思ってしまった。
　気が付けば、色々といくつもの冒険の話をしていた想花。彼女は最期に、少し照れくさそうに、こういった。
「その時に得たのが、今話した『思い出』なんだ」
　それらが、心の中でキラキラ輝いているような気がしながら、想花は小さく微笑む。アストライアはにっこり笑って彼女を見た。
「貴方の思い出、とても素敵ですね。聞かせていただき、心から感謝します……！　本を読むのも楽しいですけれども、こういった『実体験』も良いものですね」
　アストライアは満足そうに微笑み、そっと想花の手を取ってもう一度お礼を言った。

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