全力疾走！　寝子島横断三人四脚駅伝！（第三区間）｜リアクション

全力疾走！　寝子島横断三人四脚駅伝！（第三区間）

●集中力対決

「１、２。１、２」

　声を掛け合いながら息を合わせて走る【鹿】チーム。真ん中を担当する樹は転ばないように、特に足元に注意しながら走る。美野梨は他の人の走り方も参考にしながら、最善のバランスとリズムを試行する。

（新田さんたちとは身長差もあまりないし、息を合わせればスムーズにいけるはず。賞品にはこだわらないけど、やるからにはいい順位で繋ぎたいわね）

　スピードは早くないが、堅実に進み続ける。スプーンへの集中も忘れない。観客の声援が耳に届くが、集中を乱すようなものでもないので、さほど気にならない。このままのペースで次のチームへ繋げたいところ。そのときである。

「ん？」

　目の前で何かが揺れている。爺イエローが作り物の特大ねこじゃらしを振っているのだ。その大きさもさることながら、選手の視界に入るように細かく動かしたり、ときには大きく振り回したりと忙しない。
　他のところでは爺レッドがキラキラと輝くTシャツを着て筋肉をアピール。爺ブルーは風船を割る音や、ぴーひょろろ～とか、ぷにゃ～とやたら不思議な音が鳴るグッズを駆使。そして爺グリーンはすごい長話を聞かせている。既に何チームかが集中力や腹筋がやられて、スプーンからボールをこぼしている。
　【鹿】チームはテンポをやや落とすと、両端の２人がタンクのノズルに手を伸ばす。その水を爺イエローめがけて発射すると、怯んだ様子を見せた。３人４脚の状態ではクリティカルヒットとはいかないが、隙を作ることはできた。今のうちに切り抜けようと速度をあげて走り出す。それでも頑張ってねこじゃらしを振る爺イエロー。タンクの水が空になるまでこの攻防は続いた。
　この一連のやりとりで遅れを取ったのは否めない。２位との距離がほぼ重なった。

●一方その頃

　【鹿】チームがねこじゃらしと戦っている頃、【猪】チームのところでは爺レッドによる筋肉アピールが発動していた。どうあがいても筋肉が視界に入ってくる。しかし遠海は一心不乱にスプーンとその先に乗るボールを見つめている。おそらくそれ以外のものが見えていないのだろう。爺レッドのことを無視しているのではなく、そもそも気づいていない。それほどの集中力で進んでいる。他の２人もバランスを最優先に視界にちらつく筋肉を極力気にしないように努める。それに対抗するようにさらにアピールを強化する爺レッド。
　３人の速度はそれほど変わらず、堅実に進み続ける。筋肉はひたすらスルーされ続ける。

　そして【蝶】チームは爺ブルーによる音攻撃に狙われていた。形容しがたい音が爺ブルーのもとから発せられる。不意に鳴らされる音に驚いてボールを落としているチームも出ている。

（なんていうか、妙な行動が目に付くよー）

　視覚で訴えてくるものは無いが、『よくわからないなにか』が断続的に聞こえている状態。これは意外にストレスがたまる。

（あー、なんか、イライラしてくるなー！）

　その感情が集中力を乱したのか。バナーテイルの持つスプーンのボールが大きく揺れた。

（あ、あぶなっ……落ち着かないとねー……あっ、駄目だー！！）

　揺れを制御しきれずボールを落としてしまう。すぐに仕切りなおす３人。これは痛いタイムロスだ。しかし体勢を整えるまでそれほど時間は掛からなかった。

（何とかたどり着かないとー）

　ふたたび【蝶】チームは走り出した。

　それぞれのチームが妨害を切り抜けるとチェックポイントが見えてきた。最初に到着したのは【鹿】チーム。しかしほぼ同タイムで【猪】チームも到着。それぞれ白のボールから色つきのボールへと交換すると、再び走り出す。
　そこから少し遅れて【蝶】チームもやってきた。こちらも滞りなくボールの交換を済ませて上位２チームを追いかける。

このページにイラストを設定する