なにかお困りですか？｜リアクション

なにかお困りですか？

●イベントラッシュ

　天気がいいので八神修は自転車で登校していた。学校へ到着すると自転車置き場に置いてから自分の教室へ。そして下校時刻。教室をでて自転車置き場へ向かう。
　いざ自転車を出そうとしたところで、ガシャーンという音がした。音のほうを見ると自転車がドミノ倒しになっている。倒した生徒は思わぬ事態にだいぶ焦っている。
　修はすぐに駆け寄ると自転車を起こすのを手伝う。その人も慌てて自転車を起こす。全ての自転車を元通りにしたところで、修はその人の膝にかすり傷を見つけた。おそらく倒れた自転車で擦れたのだろう。その人を手当てしてもらうために保健室へ。少し歩きにくそうだったので、支えながら移動する。
　保健室に着くとさっそく手当てを受ける。その人は修に礼を言った。

「手を貸すのは当たり前だよ」

　修は会話もそこそこに保健室を後にした。
　時間を確認するとそれなりに経っていた。使用人に帰宅が少し遅れるという電話を入れる。その直後、わあっという声が上のほうから聞こえた。
　ふと見ると階段の上からピンポン玉が大量に落ちてきていた。それは階段のスペースを縦横無尽に転がり跳ねる。修の表情に驚きが浮かぶ。そしてあっという間に修の前まで来て、そのまま床に広がった。
　階段から降りてきた生徒が修を心配する。大丈夫だと伝えると修は拾うのを手伝う。彼も慌てつつ回収を始めた。

（2階の家庭科室でリストアしてたかな）

　ピンポン玉は温水につけると戻る性質があるので修はそう考えた。そしてようやく全ての玉を回収できた。彼は修に感謝を伝える。

「礼には及ばない」

　彼は一礼して、大量のピンポン玉が入った箱を抱えて去っていった。
　今度こそ帰ろうと校舎をでると、にゃーにゃーという声が聞こえた。見ると足元には1匹の猫。猫はゆっくりと歩き出し、修を振り返る。

（付いてこいってことなのかな）

　そう感じた修は猫のあとを追うと、猫は溝のあたりで止まった。なかを見るとそこには子猫がいた。どうやら親猫が助けを求めて修を連れてきたようだ。

「これは上ってこれないな……よし待ってろ」

　上着を脱いで腕まくりをすると、目いっぱい腕を伸ばす。しかし水路の奥に行ってしまって届かない。どうしようかと考えた末、修は傘を借りてきた。
　鞄に常備しているオヤツササミを裂いて、傘の先端にハンカチで括りつける。それを溝に慎重に差し込む。するとパッと子猫がつかんだ。そのままゆっくりと移動させて腕が届くところまで来たら一気に抱える。
　腕のなかで子猫が元気に鳴いている。だいぶ服が汚れてしまったが問題ない。見たところ怪我はなさそうだ。親猫に渡すと、2匹はゆっくりとどこかへ向かって歩き出した。
　学校を出てからも色々あった。アイスを落として泣いている子供をなだめたり。横断歩道を渡ろうとするお年寄りに手を貸したり。マンションから落ちてきた帽子を届けたり。自宅に着く頃にはすっかり日が暮れていた。

「まあ、こういう日もあるさ。ただいま」

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